VA Linux Systems ジャパン(株)は、5月29日に「VA Linux Kernel Forum」と題したフォーラムを「LinuxWorld Expo/Tokyo 2002」会場で実施した。ここではその中から、VA Linux Systems ジャパン(株)技術部長である高橋浩和氏の「Linuxカーネル・チューニング」と、VA Linux Systems ジャパン(株)技術部 Alexander Reader氏の「Linuxカーネル開発動向」のもようをお届けする。
「Linuxカーネル・チューニング」
VA Linux Systems ジャパン(株)技術部長である高橋浩和氏 |
一般に、システムのチューンが必要となるのは、高負荷対策やスループットの向上といったことを目指す際であり、ハードウェアレベル、運用レベルでの対策を行ない、それでも不十分な場合にカーネルをチューンすることになる。高橋氏はまず、運用レベルでの基礎的なチューンとして、不必要なサービスの停止、起動頻度の高いデーモンを静的起動させる、cronによる突発的な負荷増大を予防するために処理を分散させる、ディスクを効率的に使うため、アクセス頻度の高いファイルをディスク外周部においたり別のディスクに配置するといった方法を紹介した。
Linuxカーネルのチューンについては、キャッシュ、遅延処理、Lazy処理、並列度向上、応答性向上といった点を挙げ、現在の実装の問題点と改善策を紹介。そのうえで、意外と簡単に実行できるチューニングとして、/proc以下のファイル、ブートパラメータ、モジュール起動パラメータ、カーネル内マジックナンバーなどの設定などを紹介した。
「Linuxカーネル開発動向」
VA Linux Systems ジャパン(株)技術部のAlexander Reader氏 |
Alexander Reader氏は、カーネル1.0から2.5までの概要と、現在開発中のカーネル2.5の詳細、全体的な開発トレンドなどを紹介した。
Reader氏によると、Linuxカーネルのサイズは、バージョンを重ねるごとに対応アーキテクチャの拡大や対応ファイルシステム追加などによって拡大する傾向にあるという。そして、現在開発されているカーネル2.5が持つ、以下のような新しい特徴を紹介した。
- グラフィックのAPIに『V4L2』を採用している
- USB 2.0がサポートされる
- サウンドシステム『ALSA』が正式に採用された
- BIOSの代わりに、圧縮したカーネルとデバイスドライバを書き込んだROMを利用することで、Linuxを高速に起動させる『LinuxBIOS』をサポートした
- Bluetoothをサポートした
- Suspend to RAM/Diskをサポートした
- CPUのクロックや電圧をOSから設定可能になった
- モジュールへのアクセスを制御する『Linux Security Module』を搭載した
- IBMが開発したボリューム管理システム『EVMS』をサポートした
- 仮想メモリ管理システムを変更した
そのうえで、結論として、次期安定バージョンのカーネルは、来年か再来年には公開されるであろうという予測と、その際には安定性、デバイスサポート、大容量メモリサポートなどの強化が図られているだろうと語った。
「VA Linux Kernel Forum」は、一日を通じていずれの講演にも立ち見がでるほどの大盛況であった。なお、当日の資料については、OSDNジャパンのWebサイトで公開されるとのことだ。