KDDI(株)、日本テレコム(株)、日本電気(株)、松下電器産業(株)は22日、都内で記者発表会を開催し、各社が運営するISPが共同で、ブロードバンドサービス事業分野において、同市場の発展を促がすためのコンソーシアム“メガコンソーシアム”(仮称)を5月下旬に設立すると発表した。今後ほかの大手プロバイダーやCATV事業者に参画を呼びかけていくとしている。
(左から)松下電器eネット事業本部インターネット事業推進室室長兼ISPカンパニー社長の木村純氏、日本テレコム 常務執行役員コンシューマ事業本部副本部長の片岡忠衛氏、KDDI執行役員常務 ソリューション事業本部長の伊藤泰彦氏、日本電気NECソリューションズ執行役員常務の芳山憲治氏 |
メガコンソーシアムは、「プロバイダ同士が広くオープンにアライアンスを組むことにより、インターネット利用者の利便性を高めるとともに、ブロードバンドサービス市場の発展を加速させる」ことを目的としており、基本方針として以下の5つの分野で事業連携を検討するとしている。
- パソコン向けコンテンツサービスの共同展開
- nonPC(非パソコン)機器向けコンテンツサービスの共同展開
- コミュニケーションサービスの普及促進
- 共同投資によるブロードバンド新サービスの共同開発
- マーケティングサービスの共同展開
KDDIの“DION”(会員数215万人)、日本テレコムの“ODN”(同190万人)、日本電気の“BIGLOBE”(同405万人)、松下電器産業の“Panasonic hi-ho”(同167万人)の4ISPを総合すると会員数は977万人で、今後ほかのプロバイダー/CATV事業者が参画することを考えれば、1000万人超の会員をもつ大きなコンソーシアムとなる。
事業連携の具体的な内容についてはほとんど検討中ということだったが、共通仕様のブロードバンド向けインスタントメッセージングサービスや、IP電話の規格統一を秋ぐらいをめどに進めていきたいとしている。このほか、バックボーンネットワーク、サービスプラットフォーム、iDC(インターネットデータセンター)といったインフラの相互活用、コンテンツの共同調達と管理、新サービスの共同開発、ユーザー向けポイント制度の連携などを考えているという。
このコンソーシアムによって、利用者は充実したコンテンツサービスや、IP電話やインスタントメッセージングサービスのISPをまたいだ利用といったメリットを享受できるという。また、ISP側では、接続サービスが価格競争によって収益性が低下している中で、高付加価値のサービスによって収入を得られることや、多額の投資が必要なブロードバンドサービスに向けた投資を抑えられることなどのメリットがあるとしている。
記者発表に出席した日本電気NECソリューションズ執行役員常務の芳山憲治氏は「メガコンソーシアムへの参加は、(ほかのどのISPに対しても)オープンだ。コンソーシアム内で決まった仕様に関しても公開していく。囲い込み戦略をとろうというものではない」と、ブロードバンド市場をより拡大することが目的であることを強調した。
ただ、メガコンソーシアムの設立に至る経緯として「(So-netが@NIFTYを買収するという)例の記事がきっかけとなった」(芳山氏)とも述べており、ニフティ(株)(@NIFTY)やソニーコミュニケーションネットワーク(株)(So-net)、さらにはNTT系のISPがメガコンソーシアムに参画するかどうかは不透明だ。
また松下電器は3月11日に、三洋電機ソフトウエア(株)(SANNET)、東芝情報システム(株)(infoPepper)、(株)ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)の4社で、ISP事業全般における包括的業務提携で合意したと発表している。これについて松下電器のeネット事業本部インターネット事業推進室室長兼ISPカンパニー社長の木村純氏は「(先の提携は)ISP事業全般に関わるもの。NonPC ISPコンソーシアム(※1)においても将来共通部分が出てくる可能性はあるが、協調してやっていきたい」と述べている。
※1 NonPC ISPコンソーシアム:三洋電機ソフトウエア、東芝情報システム、ドリーム・トレイン・インターネット、松下電器産業のISPに関する業務提携において発足する、パソコン以外の機器を対象にするネットワークサービスにおけるISPの役割を検討する研究会。メガコンソーシアムにおけるISP側のメリットにも語られているように、あるいは松下、東芝、三洋らによる業務提携に見られるように、インターネット接続サービスの低価格・定額化によって接続サービス自体は(インフラなど)コストがかかる割に儲からない状況が続いている。おそらく各社が(少なくとも当初は)高収益を期待したADSLによるインターネット接続サービスも“Yahoo! BB”ショックによって、日本のブロードバンド接続料金は世界一低価格と言われるほどに下がり、あっという間に利幅の薄いものになってしまった。こうした状況ではブロードバンド接続に見合うコンテンツやサービスをISPが用意するには、(接続料金による収入が見込めないので)かなり大きな資金的リスクを最初から背負うことになってしまう。
低価格化によって、ADSL接続ユーザーは大きく増え、一層の伸びが予想されるとともに、さらに高速なFTTHサービスも低価格化の動きが始まっており、100Mbpsという超高速接続の普及も見えてきつつある。しかし、ブロードバンドの普及以前から必要性が繰り返し言われきたブロードバンド向けのキラーコンテンツは、それがビデオコンテンツなのか、ゲームなのか、電話なのかはさておき、まだ登場していない。メガコンソーシアムによって、「単にテレビのコンテンツを買うのでなくインターネットでなければ見られないリッチコンテンツ」(芳山氏)の登場や、特定のISPに依存せずそれぞれのユーザー相互で利用できるサービスの登場に期待したい。