(株)トランスウェア(※1)は25日、ノルウェーのOpera Software社のヨン・フォン・テツナー(Jon Stephenson von Tetzchner)CEOを招いて、2月8日に発表し、ダウンロードサービスを開始したウェブブラウザー『Opera 6.0 日本語版』に関する記者会見を開催した。現在はWindows版のみが用意されており、バージョンは6.01Betaとなっているが、正式版となるOpera 6.02 日本語版を3月末にリリース予定としている。
※1 トランスウェアはウェブメールシステムソフトウェア『Active! Mail』の開発・販売や、電子メール環境構築を手がける企業。ノルウェーのOpera Software社のヨン・フォン・テツナーCEO。ニックネームは“ミスター・バイキング”だそう |
ノルウェーのOpera Software社は、1995年に現CEOのフォン・テツナー氏らが創立した、ウェブブラウザー専業メーカーで、そのウェブブラウザーである『Opera』は1996年の発表以来、Internet ExplorerやNetscape Navigatorよりもファイルサイズが小さく、ウェブの表示が高速であることから“地上最速のブラウザー”として知られているという。現在の最新バージョンはOpera 6.0で、Windows版、Mac OS版、Linux版、Solaris版、EPOC版(※2)、QNX版(※3)を用意している。Operaは基本的には無償で利用できるが、ブラウザーウインドー内に広告バナーを表示する。この広告はレジストキーを購入(※4)することで、表示されなくなる仕組み。
※2 英シンビアン社が開発している、PDA/スマートフォン向けのOS。※3 米QNX(キュニックス)ソフトウェア システムズ社が開発している組み込み機器向けリアルタイムOS。
※4 Opera日本語版のレジストキーは4800円だが、現在キャンペーン期間として3800円で販売している。。アカデミックライセンスは2800円。
Opera Softwareは2001年11月に、初の日本語版であるOpera 6.0日本語版を11月末にリリースするといったんアナウンスしたものの、その後リリーススケジュールを2002年1月末に延期していた。日本語版が最終的に公開されたのは2月8日で、この公開にあたって、Opera Softwareはトランスウェアと日本語版の販売についてライセンス契約を結んだことも発表している。
トランスウェア代表取締役社長の木下陽代志氏 |
トランスウェア代表取締役社長の木下陽代志氏は「“Operaといういいソフトがある”という話を(ウェブサーバーソフト)Apacheのユーザー会で聞き、11月に連絡を取ってオスロに飛び、扱わせていただけるようお願いした。ダウンロード販売という販売形態だが、毎月1000本として年間1万2000本売り上げたいと考えている」という。また、トランスウェアの社業であるウェブメールとの連携に関して「Internet ExplorerにHotMailというウェブメールサービスがあるように、Opera日本語版にActive! Mailによるウェブメールサービスを提供していくことも検討したい」としている。なお、トランスウェアとOpera Softwareとの契約はパソコン用のOperaの販売に限ったものだが、今後は携帯電話などパソコン以外のプラットフォームに向けたものや開発に関しても協力していきたいとしている。
記者会見でフォン・テツナー氏は「Opera Softwareを1992年に設立以来、(巨大な力を持つ)米マイクロソフト社と競合する形でビジネスを行なってきたので、非常に変わった会社だと言われてきた」と切り出した。
フォン・テツナー氏が示した、Opera Softwareとパートナーシップを結んでいる企業 |
フォン・テツナー氏はOperaの特徴として、ウェブブラウジングの高速性や、マルチウインドー(MDI)形式のサポート、マウスのみあるいはキーボードのみでほとんどのブラウザーの操作ができることなどを挙げた。また、Internet ExplorerやNetscape Navigatorと比較して、W3Cなどによるウェブ技術のスタンダードに厳密に対応していることなどを強調した。
Operaのクロスプラットフォーム戦略。コアとなるのはプラットフォームに依存しないブラウザーエンジンだ |
また「(マイクロソフトがWindowsにInternet Explorerを添付している状況では)Opera Softwareは不利ではないかといわれるが、実は利点であり、これからますます有利になっていく」と述べた。
マイクロソフトではWindows用のInternet ExplorerとPocket PC用のInternet Explorerはまったく別に開発しているのに対して、OperaはWindows、Mac OS、UNIX(Linux、Solaris)、EPOCなど各種のプラットフォームで、ブラウザーのエンジン部分についてはプラットフォームに依存しない1つのコードで対応しており、携帯電話やセットトップボックスなども含めたすべてのデバイス上でOperaを動作させたいというOpera Softwareの戦略を進める上で“非常に有利な点”であるという。
ドイツの“Chip Online”のテストによる、3台ブラウザーの速度比較。Internet Explorerに劣っているのは、起動速度だけ。Internet Explorerが速いのはWindowsに組み込まれているため |
フォン・テツナー氏は「非マイクロソフトプラットフォームにおける最大で最良のブラウザーを目指す」と述べ、OperaがWindows版からリリースされる形にはなっているが、マイクロソフトの脅威の少ないLinuxやEPOCなどでビジネスを展開していくという姿勢を明らかにした。
Operaのユニークな機能の1つ。マウス操作だけ、あるいはキーボードショートカット操作だけで、ほとんどの操作が行なえるという |
フォン・テツナー氏に続いて、Opera Software社Business Developer for Asiaの冨田龍起氏がOpera日本語版のデモと今後の計画について説明した。冨田氏によると、Beta版でない正式版の日本語版は6.02となる見込みで、3月末にリリース予定。また、Mac OS版については夏頃のリリースを予定しているという。Linux版に関してもリリース時期は明らかにしなかったものの日本語化作業には着手していることを明らかにした。
2月8日に公開した日本語版(6.01Beta)は、約2週間で予想の2倍にあたる20万ダウンロードを記録し、レジストキーの購入も2500を超えているという。
質疑応答の際には、Pocket PCへの対応についての質問が出たが「Pocket PCについてはサポートの予定はない。マイクロソフトが開発しているOS上で競合するブラウザーを提供するのは、マイクロソフトからデバイスメーカーへの圧力もあり非常に難しい。むしろPocket PCと対立するようなプラットフォーム向けに開発していきたい」と答えた。Palm OSについては「現在のPalm OSは英シンビアンのEPOCなどと比べると時代遅れであり対応は難しい」としながらも「今後チャンスがあれば提携していく可能性はある」と、非マイクロソフトとして大きなシェアを持つPalm OSプラットフォームに対しては含みを残した。