パワーネットコムの電灯線モデム
Ethernet互換の電灯線モデムを製品化しているのがパワーネットコム(旧ビジコン)である。現在はLANモデム「BPLM-100B」とルータ「NETB-1000」の2種類を製品化している。チップにはスペクトラム拡散方式を採用するAdaptive Networksのものを用いており、速度は100kbpsとなっている。前述した10~450kHzという周波数制限内でスペクトラム拡散方式を用いる方法だと、100kbpsが限界のようである。アクセス制御には電灯線に接続された1~31台までのモデムのいずれかが送信権(トークン)を取得し、一定時間通信を行なう「トークン・パッシング」という方式を採用する。
電灯線モデムといっても、別にダイヤルアップ機能があるわけではない。文字とおり「モジュレーション/デモジュデーション」を行なう装置という意味であり、装置としてはLANアダプタに近いものである。PCとはRS-232Cで接続し、ドライバをインストールし、100/200Wのコンセントにモデムの電源プラグを差し込めば設定は完了。電灯線を経由して他のBPLM-100Bと通信を行なう。別途モデムとプロキシサーバを用いることで、インターネット接続の共有も行なえる(図6)。
ただ、価格は3万5000円とやはりちょっと高い。
電灯線通信では、通常の電気機器に装着されているノイズフィルタのコンデンサが通信信号を吸い込むという問題がある。これを回避するため、パワーネットコムではこの「吸い込み現象」を防止するブロック装置を提供している。
インテロジスが350kbpsを実現
一方、米国ではインテロジス(Interogis)というPLCベンダーが、個人向けの電灯線モデム「PassPort Plug-In」を販売している。PassPortはパラレルポート経由でPCまたはプリンタに接続することで、電灯線LANを実現するもの。伝送方式には速度は350kbpsで、最大31台までのノードを1つの電灯線ネットワークに収容することができる。ただし、国内では利用周波数制限の規制にひっかかるため、利用できない(ただし、Webサイト上からの購入は可能)。製品はPCとプリンタに接続する電力線アダプタ、そしてこれらをまとめたセットが販売されている。
こうした電灯線モデムは、価格はまだまだ高価だし、速度的にも不満は残る。しかし、低速なインターネット環境をみれば、100kbpsが決してボトルネックになり得ないのも事実であり、工場やマンションなど物理的に新規インフラの設置が困難な場合も数多い。しかし、事例をみると実は企業ニーズでユニークな使われ方をしているようだ(図7)。
たとえば、オフィスと倉庫を電灯線モデムでつなぎ、ハンディターミナルからの入力したデータの送信を行なうバーコードシステムや、ビルやオフィス内に設置されている電光掲示板にデータを送信するのに電灯線モデムを用いたり、といった事例である。こうした環境においては、非常に役立つ製品であることに間違いない。今後、より高速な製品が登場することで、その用途も拡大していくことになるだろう。