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ビバリウム、『シーマン for Windows』を発表――IBMの音声認識エンジンを採用

2000年12月19日 19時22分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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(株)ビバリウムは19日、同居型育成ペットソフト『シーマン for Windows』を開発中であり、2001年第1四半期にリリースすると発表した。

『シーマン for Windows』の画面。シーマンの外観や声、口の悪さはDC版と同様だが、デスクトップに常駐するためサイズはDC版より小さめ

IBMの組み込み用音声認識ソフトを採用

シーマン for Windowsは、ユーザーの電子メールをエサとして成長し、Windowsのデスクトップ上でユーザーと音声で会話を楽しめるエージェントソフト。音声認識技術は、日本アイ・ビー・エム(株)が開発した組み込み用音声認識ソフト『ViaVoice-EasySnap』を採用している。

PCを起動すると自動的にシーマン for Windowsが動作する仕組みとなっており、壁紙の中にダイレクトにシーマンが描画されデスクトップに常駐する。シーマンはリアルタイム3Dアニメーションで壁紙の中を泳ぎ回り、マウスカーソルでつかんで動かすことも可能。

シーマンの唯一のエサは電子メール。シーマンはユーザーが通常利用している電子メールソフトで受信したメールを定期的に確認し、受信メールの中からシーマン専用のバイナリファイルを持ったメールを自分のメールとして認識、内容を把握して音声メッセージでユーザーに伝える。また、メールアドレスで送信相手を判断し、迷惑メールはシーマンが食べてしまう。通常のテキストメールにはシーマンは何もしないという。また、ユーザーのスケジュール帳も認識し、それに対応した会話のやりとりも行なえる。

ユーザーがスケジュール登録した内容を把握し、それに合わせて会話する。「スケジュール表に入ってることは全部お見通しなんだよ」と、シーマン節は健在。「HDDがガラガラだぞ」などPCの状況もわかるらしい

音声メッセージのほか、文字による簡単なメッセージ機能も搭載する。デスクトップ上でユーザーが入力した簡単なメッセージ文(「元気?」など)をシーマンが抱え込んで相手先に持っていき、相手先のデスクトップ壁紙に付箋紙のように貼り付ける仕組み。

シーマン節はDC版そのまま

本日都内で行なわれた発表会では、A氏がスケジュールにB氏との発表会打ち上げの予定を入れ、それに関するシーマンとの音声メッセージのやりとりが披露された。

A氏が打ち上げの予定をスケジュール登録するとシーマンが「宴会か? いいねえ。相手はこいつか?」とB氏の名前を画面に表示。ユーザー側が「うん」と答えると、シーマンは「仕事は満足してもらったのか? オレが確認してきてやろう」と、シーマンは泳いでデスクトップ上から消え、シーマン用バイナリファイルとなりユーザーが通常利用している電子メールソフトを通じて相手(B氏)に送信される。

相手側(B氏)がメールチェックを行ない、相手側のシーマン for Windowsがメールボックス内のシーマン用バイナリファイルを認識すると、それがA氏のシーマンとしてB氏の画面に登場、「こいつ(A氏)との仕事は満足してるか?」と問うほか、B氏のスケジュールにアクセスし、「おまえの予定表、クリスマス空いてんじゃん。オレの主人も空いてんだけどいっしょに食事でもどう?」など、相手ユーザーと会話もできる。

メール送信相手先のデスクトップ画面に送り手側のシーマンが登場、メール相手といろいろ会話を交わした後、去っていく

B氏とのやりとりは返信バイナリファイルとして送信者(A氏)に返信され、A氏のシーマンはB氏のデスクトップ画面から去っていく。その後、A氏がメールチェックを行なうと、シーマンはA氏のデスクトップ内に戻り「ただいま。まあまあ満足してるみたいだな。ついでに聞いてきたけど独身らしいぞ。食事でもどうかって聞いたけど、やだって」などと教えてくれる。

他人のスケジュール表など、プライバシーをどこまで保護するかは現在検討中で、“友達リスト”などのチェックボックスを導入し、リストに登録するとシーマンの行き来が可能になるようにするといった方法を予定しているという。

2001年第1四半期にリリース予定

ビバリウムは'99年7月にドリームキャスト用ソフト『シーマン~禁断のペット~』をリリースしているが、今回発表したシーマン for Windowsでは、AI機能を強化し、ViaVoice-EasySnapを利用して音声でメッセージを届けるなどネットワークのエージェント型ペットとして開発を進めているという。

DC版シーマンは、シーマンが成長することでゲーム要素としてのゴールがあったが、シーマン for Windowsは長期に渡って利用されることを考慮し、ゲーム的なゴールは設けていないという。シーマン for Windowsのシーマンも成長していくが、言葉を組み合わせて新しい台詞を言うという一種の音声合成機能を実装しており、新しい友人ができたり、知人と疎遠になったりといったユーザーの人間関係の変化を表現できるようにしたという。

シーマン for Windows Ver.1.0は、2001年第1四半期(1月か2月)にリリースし、ネットワークプロバイダーである(株)イサオと協力して、ISAO会員向けに無償配布を行なう予定。さらに、ユーザーとの会話のやりとりを通じて、ユーザーが必要としている情報を判断し、インターネット上から適した情報を集めてユーザーに教えるマッチング機能を搭載したVer.1.2を2001年第2四半期後半(6月ごろ)にリリースするとしている。また、Ver.1.2と同時期に携帯電話対応版も提供、2001年下半期には家庭用ゲーム機対応版もリリースするとしている。

シーマンはViaVoice-EasySnap対応の世界初の製品

ViaVoice-EasySnapは、IBMが11月2日に発表した組み込み用音声認識ソフト『ViaVoice Embedded Edition, Mobile Edition』のWindows版。コマンド&コントロール専用ソフトで、既存の音声認識ソフト『ViaVoice』のように専用マイクロフォンを必要とせず、PC内蔵のマイクで音声認識が可能。エンロールメントの必要もない。

また、組み込み用途のためプログラム容量が250KBと軽量、動作に必要なCPUは数MHz、メモリーは200KBとPCにかかる負荷が少なくなっているため、Windows 95以上が稼動するPCであれば動作可能。200語以上の単語と不特定話者モードに対応し、言語環境の制限もないため、日本語、英語、ドイツ語などさまざまな言語で利用できる。IBMはViaVoice-EasySnapをアプリケーションベンダー向けに開発ツールをして提供するとしている。

まず普及させることが大事

発表会でシーマン for Windowsについて紹介したビバリウム代表取締役社長の斎藤由多加氏は、「シーマンはネットワークを前提をしたコミュニケーションソフトで、エージェントを目指して開発している。小型でCPU負荷の少ない音声認識エンジンを採用することでデスクトップに常駐できるペットが実現できた」

「また、従来のViaVoiceは専用マイクロフォンが必要なのでユーザーが強い意思をもって話し掛けなければならないが、ViaVoice-EasySnapはPCに標準で内蔵されているマイクでの認識率が向上しており、専用マイクが必要ない。さりげない日常の中でユーザーの声をキャッチできる」

「シーマンがあまり強く存在感を持たないことにポイントを置いて開発している。常駐ソフトがずっとしゃべっていてもうるさいだけなので、他のアプリケーションを操作しながらシーマンを常駐利用できるよう、シーマンの会話のテンポを遅めにしている。シーマンの時間の流れと、会話の量の調整がポイントだ」

「シーマンは、メール相手も同じソフトを持っていないとつまらない製品なので、まず利用者を増やすことが必要。2001年第1四半期にISAO会員向けに配布することでベースを作り、第2四半期には携帯電話版、下半期にゲーム機対応版を提供、メール相手がシーマンを持っていないという状況を回避する」

「人間関係を仲介するシミュレーションソフトでもあるので、例えば彼女や親など非常に仲のいい人に対してどこまでプライバシーを保護するかは検討中。ユーザーが不快になることは避ける」

「パッケージ販売をやらないわけではないが、メインはASPに近いビジネスモデルとなる。Ver.1.2で提供するマッチング機能を利用して、広告主からの情報をシーマンに言わせて広告宣伝費をもらうといったビジネスも検討している」と語った。

ビバリウムの斎藤社長

また、日本IBMソフトウェア事業開発担当の岡部春樹氏は「ViaVoice-EasySnapは、ViaVoice Embedded Edition, Mobile EditionをベースにWindows環境に移殖したもの。最初の対応アプリケーションがシーマン for Windowsとなる。シーマン for Windowsは、声によるPCとの対話時代におけるキラーアプリケーションだ」と挨拶した。

日本IBMの岡部氏

ビバリウムと日本IBMは、シーマン for Windowsのプロモーションを協業するとしており、ViaVoice製品版やIBMのPCにバンドルすることも検討中だという。

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