このページの本文へ

マイクロソフト(株)クライアントWindowsマネージャー : 御代 茂樹氏

Windows 2000チーム徹底インタビュー (その1) 僕たちはWindowsにロックオンしておく~Windows 2000 Professional~

2000年11月08日 02時39分更新

文● 聞き手、構成:MSDN Magazine編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
[編集部] リリース前の記者発表で、「次期Windows Neptuneを待たずして、Windows 9x路線とNTカーネル路線を統合したのがWindows 2000である」と、重要なマーケティング戦略を発表されました。また「Windows Millennium Edition」は、スペックダウンはあるにしても、レガシフリーや新しい機能や周辺機器が利用できる、安価なプリインストールマシンでリリースされるというメッセージを発表された。

 それに反して、「Windows 2000は、夏の商戦、冬の商戦を視野に入れつつ、長いスパンでマーケティングを展開していく」とも発表された。「長いスパン」という言葉を、今まであまり聞いたことがなかったと思うと同時に、もしかしたら、この人たちはWindowsをホッチキスやコピー機にしたいんじゃないかと私は思ったんです。いわゆる文房具は丈夫だし、会社にいて使い方を知らない人はいない。私の中ではWindowsがそういうイメージになってきている。

 以前とは、意識が変わってきている部分があって、かつてはWindowsを使うことを楽しんでいたものが「ベース」に変化した。現在では、その上で何ができて何をするのかが問題になってきていて、プラットフォームという位置付けがより広がってきているという部分があると思うのですが。

[御代] まさにそのとおりなんですけれど、「でもね」というところがあって、Windowsは、この顔にしてから5年になるわけです。これを考えると「本当にこの顔が分かりやすくていいのだろうか」と考えてしまう。「顔が変わってもいいんだ」っていうパラダイムもあるわけです。車で言えば、操作を覚えた、ハンドルはここにあるというところまでは固定したと思うけれど、この後、どのようにすれば本質的によりよくなるんだろうか。やはり、これは考え直す必要がある。

 現在では、この「Windows Experience」といった英語の名のもとに、誰でも分かる車のハンドルと同じように操作できるようになった。ユーザーが何か操作を行なう場合の、非常に大事な一番最初のハードルですからね。しかし、たとえばホッチキスだって、ちょっと難しい2段ホッチキスとかを作った瞬間に、「人は分からない顔を作った瞬間に選択しなくなる」という難しい問題に直面する。

 こういう問題は、商品といった以上、とても大事なことだと思う。でも「本当はこうだったんじゃないか」というのは考え直してもいいはずだと思う。こういった問題に関しては、2001年でも2002年でも、僕はトライすべきだと思うし、これから始まるロングタームの中では、すでに検討項目として挙がっています。

 それと、今、もう1つ悩んでいるのは、2つのOSがあって、コンシューマ向けとエンドユーザー向けといったように、エンドユーザーのセグメンテーションを考えて機能を分けて提供して、「どちらかをお選びください」という方法が、本当にユーザーのためになるんだろうかという部分です。ユーザーをセグメンテーションするマーケティング方法は、日本では馴染まないということもあるけれど、たとえば1人のユーザーが、会社と同じものを同じ環境で使いたいと、普通のエンドユーザーの60数%が思っているとしましょう。

 いわゆる完全にホビー系や職業に特化した環境や、学生といった立場で一辺倒のものしかないという環境以外は、人間は二面性を持っているんです。家でパソコンを使って子供とゲームの相手をしながら過ごしている自分もいるし、家に会社の仕事を持ち帰って、夜中に帰宅残業している自分もいる。多分これは、一般的なサラリーマン、一般的な社会人、いわゆる30~40代までの最大購買層の典型的な生活パターンですよね。これが、最大のコンピュータのユーザー層だと思うんです。

 この人たちの二面性に対して、あなたはこっち、あなたはこっちといった、二面性に対してそれぞれの商品を与えるのと同じことをやろうとしている。これが、正しいメーカーの動きなんだろうかと思う。しかし、1つになった時には、次の問題が出てくるわけですよ。Windowsが掘り下げなければならないテーマというのは、顔だけじゃない、いろいろなベースとなるテクノロジーに対応する新しい拡張だったり、サービスと同じように考えて、新しく開拓していかなければならないものが、まだまだたくさんある。コンピュータはここで全然終わっているわけではなくて、プロフェッショナルからエンドユーザーまで、これからやりたいことが、もっともっとたくさんある。

 小さなデバイスから大きなものまで細分化するのではなくて、コンピュータの可能性はもっともっと出てくる。だから、OSの側がもっと発展していかなければならないと思う。そこで、その上のサービスに関しては、それこそエンドユーザーのセグメンテーションにあった別の進行の仕方があっていいはずだと思う。ある意味ではプラットフォームが何であるかというよりも、その上で動くアプリケーションやサービスの開拓者や開発者、提供者の人たちに、使えるサービスやバックグラウンドの基礎を提供しなければならないと思うんです。

 だから、Windows2000では「この問題があります」というのは、前もってきちんと伝えておかなければならないと考えています。顔で引っ張るわけでもないし、新しい単純なアーキテクチャで引っ張れるわけでもない。明らかに中味のここを変えたんだよと、ユーザーには実感していただいて、気がついたら全部Windows 2000にいるよね、心地よいねっていうふうにしたい。だから、ロングタームのマーケティングと言っているのはそういう意味なんです。

 来年の今頃は、もっと忙しいしたいへんだと思う。そういう点では、5月に何を考えるべきか、9月に何をするべきなのか、2月、3月に何をしているべきなのか、着実なステップを踏んでいきたい。今回、外から聞いていると、表に向かってのメッセージのように聞こえたみたいだけれど、「新しくやるんだ」という発表は、実はマイクロソフト社内に対して喚起する言葉だったんです。

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ