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「ビジュアルコラボレーションを行なわなければ、不況時に企業は生き残れない」--ピクチャーテル富田直美社長に聞く

1999年04月30日 00時00分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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ピクチャーテルは(株)、ISDNやLANを利用したテレビ会議システムの最大手メーカー。4月7日に(株)エヌ・ティ・ティ エムイー(以下NTT-ME)とIPベースのテレビ会議システムに関するビジネス提携について合意、IP市場に参入を果たした。今秋より本格稼動するというIPベーステレビ会議システムをはじめとする今後の事業展開に関して、同社代表取締役社長の富田直美氏にお話を伺った。

ピクチャーテル(株)の富田直美代表取締役社長
ピクチャーテル(株)の富田直美代表取締役社長



●NTT-MEとの提携について

「今回の提携に関するいちばんの強調点は、ISDNにおけるテクニカルシステムの世界チャンピオンが、IPの世界に対してもビジネスをスタートするということですね。IP市場で事業展開するためには、今までネットワークが不十分だったのですが、一般公衆回線に非常に近く、自分の好きなタイプを選べる“XePhion(ゼフィオン)(注:NTT-MEが提供する光ファイバーを活用した超高速/広帯域のマルチメディアサービス)”というものが提供されるということが、ひとつ非常に大きな要素としてある。もうひとつは、いわゆるLANの中にはいろいろなプロトコルが走っているわけですから、それらをしっかりとサポートできる人たちと組まなければならないわけですね。そういう理由でNTT-MEさんと提携したわけです。提携の背景にあるのは、ピクチャーテルが、テレビ会議システムを提供する会社から、ビジュアルコラボレーション、概念的に言うと広い世界を見据えた企業になろうとしているということです」

「テレビ会議というのは、まだマーケット自体も本当に小さいんですね。なぜもっと市場が伸びないのかということを考えたとき、いろいろな理由がありますが、ひとつの大きなボトルネックになっているのは、テレビ会議システムを購入し、さらにISDNも入れなければならない、そして実際に行なうことというのは結局、通常リアルタイムにフェイストゥーフェイスでやっていることをリプレイスするだけというのがほとんどなんですよ」

「ところがコラボレーションというのは、決してリアルタイムだけではない。時間が少し経ってから返事してくださいというのもコラボレーションですよね。要するにリアルタイムではないコラボレーションは、いっぱいあるわけです。事実、われわれの通常業務を考えたとき、リアルタイムではないコラボレーションのほうが圧倒的に多いのです。会議に参加していることが多いのか、顧客に会っているほうが多いのか、それともひとりで机に向かっているほうが多いのかと分析してみますと、四六時中リアルタイムのコミュニケーションだけで1日の仕事が終わる人はいないんですよね」

「しかし、机にひとりで向かってる人がコラボレーションをまったくしてないかというと、例えば誰かからきたメールに対してリプライしている、これも時間差のあるコラボレーションですよね。人間の行動にはいろいろなコラボレーションの仕方があるのです。トータルなビジュアルコラボレーションということを考えたとき、それぞれいる場所もシステム環境も異なるわけですが、ありとあらゆる場で、何らかのコラボレーションというものが行なえるような形のソリューションをピクチャーテルは提供したい」

「だが簡単には実現できない。われわれにツールが揃っていたとしても、時間差をおいてコラボレーションをするストリーミングというテクノロジーを実現するには、解決しなくてはならない問題がいっぱいありますから、ちゃんといっしょに解決してくれる人と組まなくてはならない。われわれが昨年から提唱している“CBN(コラボレイティブ・ビジネス・ネットワーキング)”、いわゆるコラボレーションしながらビジネス展開するためのネットワークということですが、このことを世の中に広めていくためのいちばん適切なパートナーということでNTT-MEさんを選ばせていただいたというわけです」

「われわれはすでに、大塚商会さん、キヤノンさんなどのチャネルを持っています。これらとNTT-MEさんとの大きな違いは、XePhionというネットワークを持っているかどうかというところでしょうね」

●ターゲット市場は大企業か?

「それはNTT-MEさんがそう発表されただけのことであって、ピクチャーテルはそうは考えていないんですよ。ただNTT-MEさん側で本格的に提供される企業が、だいたい大企業が中心になるだろうということです。確かに、企業内でビジュアルコラボレーションをする必要があるかどうかと考えた場合、その企業の支店などが離れたところにあればあるほどニーズというのは高くなりますから、そういう意味では大企業というくくり方も正しいかなとは思います」

「例えば、オフィス内には30人くらいしかいないんだけど、日本全国に支店が20ヵ所あって、総人数は600人だとすると、これはおそらくテレビ会議システムを入れるでしょうし、逆に社員は1万人いるが1ヵ所にしかいないとなると、システムを導入してどれだけ効果があるかということになります。やはり離れていれば離れているほど効果は高いでしょうね。そういう意味では、大企業という言い方はあまり正しい表現ではないですが、間違ってもいないですね。大企業でも1台も導入しないところはありますし、中小企業でも、何十台、何百台入れているところがあります。『テレビ会議システムを導入することで生産性が上がる』と考えると、中小企業でも入れるんですね」

●テレビ会議システムを導入しているのはどんな企業か

「例えば、同じような製品を各社が開発していて、市場に製品を投入するのが1ヵ月でも1日でもはやいほうが絶対勝ちという市場もあれば、製品を投入した日にちよりもその後の価格政策が大事な市場もあります。製品によっていろいろ違いますよね。テレビ会議システムは、製品を市場に出す日が問題なんだという企業、そこが生命線だという企業が導入するんですよ」

「わかりやすい例でいうと、製薬会社がそうです。製薬会社は、各社がほとんど同じような薬を開発するのですが、一番先に新製品を発表して一番先に市場に投入したメーカーが圧倒的なシェアを取ってしまうんですよ。1ヵ月はやく薬が売れるようになるかどうかで何十億円、何百億円という売上の差が出てしまうんです。ですからシビアであればあるほど、その業界はわれわれの製品を必要とするわけですよ。逆にシビアじゃなければ、こういうものはいらないんです」

「そういう意味でいうと、日本が不況に陥っているということは、われわれにとってプラスに働くわけなんです。ストールすればするほど生き延びるために必死にならざるを得ない。バブルのときは何やっても儲かっていたんです。競合他社のほうが自社より余計に儲かるというだけだから別にいいやと構えていられたんです。今は違う、生きるか死ぬかなんです。だからクリティカルなポイントになればなるほど、コラボレーションを遠隔地でやらなければその企業は生き残れないんです、コストがかかりますから」

富田氏のデスク。PC画面には、シドニーのリアルタイム映像がネットワーク経由で表示されている
富田氏のデスク。PC画面には、シドニーのリアルタイム映像がネットワーク経由で表示されている



●企業ユーザーへのメッセージ

「今後を生き抜く、ポジティブに言うなら21世紀に羽ばたいていくためには、いろいろな人間とコラボレーションできないと企業は残れないんですね。これは好き嫌いの問題ではないんです。本当に生き残りたいと思ったら、真剣にこのビジュアルコラボレーション、テレビ会議システムというものを1度しっかりと検討してもらいたい。ビジュアルコラボレーションを行なえば、企業は生き延びていけるんだと確信を持って言えますね」

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