銀行を主体とする電子マネーに関する非営利団体であるスーパーキャッシュ協議会は本日、電子マネー“スーパーキャッシュ”の共同実験を開始した。スーパーキャッシュは、日本電信電話(株)(NTT)が開発した技術。今回の実験では、銀行のキャッシュカードに電子マネーの機能を付加したICカードを利用し、実験地域となる東京・新宿周辺の商店での利用(リアル実験)と、インターネットでの利用(バーチャル実験)を検証するもの。リアル・バーチャル全体で10万人の実験モニターを募集する。実験に参加する銀行は、リアル・バーチャルの両実験に参加する17行と、バーチャル実験のみに参加する7行の合計24行。実験地域は東京・新宿駅から初台駅の周辺と、インターネット上のバーチャルモール(ウェブページ上の商店)となる。実験期間は本日から、来年の5月31日まで。
スーパーキャッシュのロゴ |
スーパーキャッシュの特徴は、ICカードへの電子マネーのチャージ(充填)と、リアルで使用した場合に発生するポイント加算があげられる。電子マネーの充填には、対応するNTTの公衆電話からのものと、インターネットを利用した充填の2種類がある。商店での電子マネーとしての利用以外に、スーパーキャッシュに対応するNTTの公衆電話での電話料金としての利用や、対応する自動販売機で飲料の購入も可能。また、商店で商品を購入した場合、その商店ごとに発生したポイントをカードの中に記憶させることもできる。
本実験に参加する加盟店にはICカードを読み取り1日一回蓄積された電子マネーデータをスーパーキャッシュのシステムセンターに伝送する端末が貸与される。また、モニターには、ICカードと共に、ICカード内の残高を表示する“バランスリーダー”と、バーチャル実験の再にコンピューターに接続して利用する“ICカードリーダーライター”、“電子財布ソフト”が無料で貸与される。
実験開始の開幕式では女優の高島礼子氏が登場
本日、東京・新宿の(株)高島屋が経営する、新宿高島屋にてスーパーキャッシュの実験開始の式典が開催された。式では、第一勧業銀行 専務取締役の保坂平氏と、日本電信電話(株) 常務取締役の鈴木正誠と
(株)高島屋 新宿高島屋店長の兼平進氏、そして女優の高島礼子氏が出席し、祝辞を述べ、テープカットした。
テープカットの瞬間 |
第一勧業銀行、専務取締役の保坂平氏「今回の実験は、高島屋などの実際の商店の協力によるリアル実験、インターネットを利用したバーチャル実験、そして10万人のモニターという世界でも初といえる規模のもの。金融各行が新しいサービスにしのぎを削っている現在、スーパーキャッシュは電子マネーという次世代のインフラとして着目している。各行とも大きな期待を持ってスーパーキャッシュの共同実験に取り組んでいくだろう」
保坂平氏 |
日本電信電話(株)、常務取締役の鈴木正誠氏「電子マネーの実験は、今までにも国内外で多く実施されてきた。しかし、どの実験も成功には至っていない。スーパーキャッシュは、24行の銀行との協力に、公衆電話機でも利用できる使い勝手の良さ、10万円という高額のカード上限という3つの強みがある。これだけの革新的な要素を持つ電子マネーは初めてだと思う。今回の実験が、実験で終わらぬよう、実用化に向けての第一歩になって欲しい」
鈴木正誠氏 |
(株)高島屋、新宿高島屋店長、兼平進氏
「喜ばしいことだ。この実験が成功し、実用化されると、画期的な世の中になるだろう」
兼平進氏 |
女優の高島礼子氏「主婦として楽しみ。実験の成功を祈ります」
女優の高島礼子氏 |
それぞれが祝辞を述べた後、スーパーキャッシュの開発を手がけた、NTT 先端ビジネス開発センタ所長の遊佐洋氏が登場した。遊佐氏は女優の高島氏に、公衆電話を使い、ICカードに電子マネーをチャージする方法をレクチャーした。高島氏は、はじめは手間取りながらもカードに電子マネーを充填し、そのカードを使い高島屋のハンカチ売り場でハンカチを購入した。
公衆電話を使いチャージする高島氏 |
ハンカチを選択する高島氏 |
ハンカチを購入する高島氏 |
遊佐氏に単独インタビュー
ascii24では、スーパーキャッシュの開発を手がけた、NTTの遊佐洋氏にインタビューをした。遊佐氏が所有していたカードはキャッシュカードにICチップが付いているようなものだった。ベンダーによって、カードにホログラフが埋め込まれているものなどさまざまな種類があるという。
ICカードとカードリーダー |
--個人情報が店に流れたりしてしまう心配はないのでしょうか
「その心配はありません。このカードは現金のトラフィックのみを記録します。商店ではいくらの商品が売れたかということは分かりますが、どこの誰が購入したということは分かりません」
--カードの偽造や、不正処理へはどのように対策を打ちますか
「カードの中の情報を表示する携帯型のカードリーダーをカードとともに配ります。カードリーダーで暗証番号を入れることにより、本人以外が利用できぬよう、カードにロックが掛けられます」
「また、このスーパーキャッシュのシステムでは、すべての電子マネーの入出金情報をカードとサーバーが記憶しています。その情報には各々にユニークなIDが付加されており、IDに相違が出た場合は、カードのトラフィックがなかったことになります」
「さらに、ICカードに対し、ユーザーが何らかの不正処理を行なおうとした場合、カードがみずから壊れるようにできています」
--ICカードの容量の面から見ると、キャッシュの入出金情報をどれだけの件数、覚えられるのですか
「1円単位で入出金した場合でも10万円くらいまでは余裕で記憶できます。すべてのトラフィックの合計がカードに残っている残高になります。ここが通常のマネーカードとの相違点です。通常のマネーカードでは、残高だけを記録する事が多いのです。そうすると、多数の入出金のうち、どれかに問題が見つかったとき、それが及ぶ金額がわからなくなります」
すべてのトラフィックの合計が表示される |
--パソコンでICカードを利用するには何が必要ですか
「銀行が無償で配るカードリーダー/ライターだけです。ICカードの情報を読み込むためのツールは、カードとバンドルして配られます。金銭のトラフィックはウェブを通じて実行されます」
パソコンでのカードリーダー画面 |
--ウェブの場合、ユーザーが“戻る”ボタンを押してしまうなど、予測できない行動を取る事が想定されます。そうしたエラーにはどういった対処をするのですか
「戻れません。ブラウザーの戻るボタンを押しても1つ前の画面には戻れないようになっています。ICカードを使って、金銭のやり取りをはじめた場合、“中断する”と“先に進む”以外には選択できなくなります。一方通行にすることでセキュリティーを保っています」
パソコン用ソフトウェアの画面 |
--通信中にシステムがハングアップした場合は?
「それまでのトラフィックがすべてサーバーに残っています。その記録されたトラフィックから再開できます。カードが壊れた場合は、銀行でカードを復旧できます」
新宿高島屋に設置された、スーパーキャッシュ対応公衆電話 |