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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第51回

Windows 7が示すコンピュータの歴史的転換

2009年01月21日 06時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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「右肩上がりの時代」は終わった

Windows 7 ベータ版のデスクトップ画面。早ければ2010年初頭に登場すると言われている

 Windows 7のベータ版のダウンロードが始まった。ASCII.jpでもいろいろなレポートが出ているが、おおむね評判はいいようだ(関連記事)。

 私もダウンロードして使ってみたが、よくも悪くもVistaとあまり変わらないというのが第一印象だ。カーネルはVistaのSP1と同じだというから、互換性もほとんど問題ないだろう。

 Vistaはセキュリティや検索機能の強化などを売り物にしたが、結果的にはシステムが重くなり、ソフトウェアの実行にいちいち確認メッセージが出てくる、使いにくいOSになってしまった。それにくらべてWindows 7は「あまり新機能がなく物足りない」という意見もあるが、私はこの物足りなさに意味があると思う。

 特に重要な変化は、OSが使用するメモリをSP1より減らしたことだ。要求仕様が前のバージョンより少なくなるのは、Windowsの歴史で初めてのことである。開発責任者のスティーブン・シノフスキー氏も、パフォーマンスの向上を重点項目に掲げている。ユーザーの関心も、Netbookのような小さなコンピュータで動くかどうかに集まっている。

 この変化の意味は大きい。これまでWindowsはバージョンアップするたびに重装備になり、それに対応してハードウェアも大きくなってきた。しかしムーアの法則(半導体の性能は3年で4倍になる)によれば、コンピュータの性能は10年前の100倍だ。つまり3万円のNetbookの性能は、10年前に300万円した大型サーバーと変わらないことになる。これは個人用のコンピュータの性能としては、もう十分だ。

 つまり今、性能への要求が絶対的に飽和したという、コンピュータの歴史はじまって以来の出来事が起こっているのだ。これはハードウェア業界にとっては深刻な問題だ。「アンディ・グローブが与え、ビル・ゲイツが奪う」と言われるように、ムーアの法則によって向上したコンピュータの性能を肥大化したソフトウェアが食い潰し、それによって新しいコンピュータへの買い替えを強いる、という形でIT業界は拡大してきたが、その右肩上がりの時代が終わったのだ。

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