最新トレンドはクラウドコンピューティング
桜子 では、押さえておくべきサービスは?
神田 「クラウドコンピューティング(cloud computing)」。自分のハードディスクに物を置くのは、タンスに現金を置くようなもの、という社会に変わってきています。手元に置かずホスティングしている場所に置く。あるいはネット上のバンクにIDとパスワードで入るとか、そういうことになるんじゃないかな。端末もUSBもいらない。
ケータイから自宅PCにアクセスして、必要なファイルを取り出すことが出来る時代。だからこそ物をしまっておくより、他人に物を公開した方がメリットが高いのだという。
神田 勝手に人のデータを自分のデータとして活用できたりするんですよ。だからね、僕は知ったことを、手帳でなく、全部Wikipedia(以下、Wiki)に書いて、どんどんWikiを書き換えています。非常に迷惑な話かも分かんないけど(笑)、自分のやれることは大したことないですからね。Wikiのルールに則って書き換えた方がログが残るし、削除理由も分かる。あ、僕の推測が入っていたからだ、とかね。そうやって使うとWikiには未来を予測する所がないから、「Wiki future」が欲しいよ、とデマンド(demand=要求)が出てくる。
使い込めば不都合なことやツメの甘さに気づく。だからとにかく自分でやってみて、自分の我儘をもっと主張していけばいい、と神田氏は指南する。
神田 今までは我儘を通そうとすると壁にぶち当たるんだけど、今我儘という視点で物を言う人があんまりいない。人間の我儘で技術は革新し発展するから、そう思うと今までのトレンドを追っかけるより自分たちで作りだした方が早いでしょう。アラン・ケイ(注3)の言ったことを一般市民が出来つつある。
未来を予測する最良の方法は未来を発明することだ。 by アラン・ケイ
注3
アラン・ケイ(Alan Kay)。通称パソコンの父。PCの概念を提唱した人物として知られる
最新トレンドは下記サイト参照(机にかじりつくより、僕なら“試す”と神田氏)
所有より共有に価値あり
神田 ロングテール理論の提唱者クリス・アンダーソンが「所有する形の貧困経済、それが潤沢経済に変わった」と。物質的な質量はいっぱいあるけど、次はたぶん公開と共有――つまり今まではお金をどれくらい持っているかに価値があったけど、お金をいかにうまく活用してサスティナブル(sustainable=持続可能)に使うかということに実は価値がある、という風に変わってきている。
編集部 オープンソース後のコミュニティ価値みたいにgiveしたことで価値が上がる……。
神田 そう。takeは考える必要ない。give&giveもしくはgive&shareとか。会社にいると、どうやってそこでビジネスするんですかと言われちゃうけど、でもネットのビジネスにおいては、ビジネスしようと思ってやっている人は全部失敗しているんですよね。ビジネスにならないことがビジネスになっている世界。だから五カ年計画が立てられるビジネスモデルなんてあり得ないんですよ。
桜子 心得は?
神田 基本的にどんどん人に使ってもらって、人の反応を見てどれだけ自分がフィクシング(fixing=適応)し、順応性を持って対応できるか。そこは、もう、柔らか~くないとダメで、僕も硬直しないように若い人達と付き合うようにしてますもん。
桜子 ほんとに? その秘訣をあとで聞こう(笑)
神田 アハハ。先輩は先輩でリスペクト(respect=尊敬)していますけど、小学生や中学生が何をやっているかを見ていないと。デジタルネイティブに学べ! という時代ですから。そうしないと今までの価値や経験でビジネスはこういうもんだ、というのが崩れる。これからは、ますますデジタルネイティブな人とインターネット紀元前と紀元後の人との戦争が起きる!
デジタルネイティブに学べ!
神田 先日ね、(株)NTTドコモの幹部が役員室に集まって柔らか頭を養成するために任天堂(株)の「Wii」を触っているという記事を読んだんですけど。
桜子 ぶっ(笑)。やりそう……。
神田 もうあれ読んだ瞬間、役員室じゃなくて家に帰って自分達の子供や孫と話せよと。見ればわかるよって。
桜子 ああ……。
神田 でもそうやらないとダメというのは、カリキュラムやプログラム、ルールにのっとっていくというのでずっと成功体験してきた時代の人達だから、そうしないと納得できないんでしょうね。周りと同じようにやり、その中で自分が抜きん出て行く術をつける人が今までは良かったんでしょう。でも、抜きん出る人より、皆に提供して皆に知っていることを教える人の方が実は評価があがる、それがこれからなのかなと。
(次ページ「人間は動物にない使命があるはずだ」に続く)
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