発売前はITニュースの目玉としてテレビや新聞に盛んに取り上げられていたiPhoneだが、最近ではその風潮も落ち着いてきた。逆に「売れ行きにブレーキがかかっている」と報道されたり、購入者からバッテリーや日本語入力などに関しての不満が出てきたりと、ネットではネガティブな要素も目に付くようになっている。
結局、iPhoneの日本上陸はどう評価すべきなのだろうか? 前編に引き続き、後編ではiPhoneがサードパーティーなどにもたらした影響や現状の弱点などをまとめていく。林氏自身がどうやってiPhoneを楽しんでいるかも聞いてみた。
過去のiPhone記事
・iPhoneは大きな森を生み出す「最初の木」(前編、中編、後編)
・なぜiPhoneは人々を熱狂させるのか?(前編、中編、後編)
・林信行に聞く「ソフトバンク、iPhone発売」(記事)
・iPhone発売から1ヵ月を振り返る(前編)
そもそも数が出る製品ではない
── 発売から1ヵ月経った今、「iPhoneはヒットした」と言えるでしょうか?
林 iPhoneがどれくらい広がるか──。私はそれについていつも答えを避けてきました。今でも特に何台といった台数を予測するつもりはありません。
というのも今後、メディアやブログでの評判、キラーアプリの登場などによって売れ行きが変わってくるからです。「販売店での売り切れ状態が収まったから、iPhoneは思ったよりも売れていない」と書いているメディアもありますが、1ヵ月後の反応だけを見て決めるのは早計かなという思いもあります。
確かに人々がソフトバンクショップに押し寄せるという勢いは、止まったかもしれません。しかし、実際、iPhoneが出てすぐに飛びついた人が、これまでのケータイになかった使い方を友達に見せて、それをきっかけにiPhoneを買いに行くという人達もじわじわ増えています。
むしろ、これから買う人のほうがよく吟味してiPhoneを手に取った人たちなので、iPhoneがより多くの一般人に受け入れらるかを占う試金石になるのではと考えています。
── 「前評判よりは、iPhoneは爆発的に広まってないね」というイメージを持っている人もいるかと思います。
林 iPhoneはそもそもそんなに圧倒的に数が出る製品だとは思っていません。アップル自身、「目標は2008年末までに世界市場の1%」と言っています(関連記事)。1%というと、つまりケータイが100台あったら1台はiPhoneという計算ですね。
※スティーブ・ジョブズCEOは初代iPhoneの発表時、2006年における全世界の販売台数は9億5700万台と紹介した。ちなみに米ガートナーによれば、2008年度における携帯電話市場の予想出荷台数は12億8000万台とのこと。これは昨年の11億5000万台から11%成長するという(関連リンク)。
日本の場合は、ケータイヘビーユーザーの2台目として受け入れられている現状を考えると、100分の1台よりもっと少ないでしょう。将来的にドコモがiPhoneを発売して、それとの合算なら1%に達する可能性もありますが。特にソフトバンクの電波が十分行き届いていない地方都市では、ほしくても安心して使えないから買えないという事情があるという意見も聞いています。
iPhoneが成功したか否かは、出荷台数というよりも、売れるべき層にちゃんと売れているかとか、iPhoneの登場で成功しているアプリ開発者が出てきたとか、新しいライフスタイルを広めたとか、そういう部分で判断されるべきだと思っています。少なくともほかのケータイ事業者に与えた影響という点では、すでに十分インパクトのある成果を出しているんじゃないでしょうか。