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iPhone発売から1ヵ月を振り返る(後編)

iPhoneはヒットしたのか?

2008年08月25日 15時25分更新

文● トレンド編集部、語り●林信行

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万人に受け入れられるためには


── 林さんにとっては必須アイテムのiPhoneですが、まだ触ったことのない多くの人にとって同じような存在になれるでしょうか?

 いや、今のiPhoneは万人に勧められるものではありません。


── と言われますと?

 iPhoneは、これまでのケータイとはまったくの別物で、パソコンに近い存在なんです。たまにフリーズしたり、日本語の入力が遅くなったり、電波が入りにくかったり……まあ、これはiPhoneだけのせいではないかもしれませんが。そうしたことをある程度分かっていて、寛大に受け止められる人向けの製品という感じでしょう。

 いずれiPhone OSのバージョンが2.1、2.2といった具合に上がっていけば、もっと一般の人にも勧めやすくなると思いますが、今はまだ完全な初心者向きではありません。慌てて買って下手に悪い印象を持ってしまうよりは、もうしばらく売り切れが続いていたほうがよかったとも思います。


── 私もiPhoneを使っていますが、アプリをいくつも起動すると不安定になりますよね。そんなときには本体を再起動するんですが、考えてみれば日本のケータイで再起動が必要になる端末というのは、そうないですよね。

 これまでの日本製ケータイでもまったくなかったということはないと思いますよ。私は数種類の日本製携帯も併用していますが、たまに電源が切れていて「バッテリー切れかな?」と思うとそうではなくて、ひっそりとクラッシュして再起動していた、なんていうことがあります。これは携帯電話の高機能化に伴う弊害のひとつですね。

 実は最近では、App Storeも、iPhoneの発売から数ヵ月後にあえてオープンしたほうがよかったんじゃないかと考えていたりもします。

 初代のiPhoneは、アプリを追加できませんでした。しかしそのおかげで、米国の購入者は1年間じっくり標準のソフトを触って「これがiPhoneなんだ」ということを学んでから、次のステップとしてApp Storeのソフトを楽しんでいる。

 一方、日本のユーザーはいきなりApp Storeまで提供されてしまった。iPhoneは数ヵ月楽しめるくらいに基本機能が充実しているのに、「iPhone=App Storeでアプリを拡張して楽しむ携帯」といった印象を持っている人もいます。


── 「何だか難しそう」と思っている人も少なくないと思います。

 そういえば先日、同窓会にiPhoneを持って行ったんです。そうしたら、パソコンが苦手な同級生がアプリのアイコンがいっぱい並んだ私のiPhoneを見て、「何だか機能のボタンがいっぱいあって難しそう。私には操作できそうにない」と言っていました。

 初代iPhoneのホーム画面は1ページ構成で、シンプルで誰にでも分かりやすいのがウリだったんです。しかし、日本ではいきなり2ページ構成で始まってしまった。このあたりもパソコン苦手/機械音痴系の人達との距離感を作ってしまう。

 今後、iPhoneが新しいユーザーを取り込んでいくためには、動作の安定性を向上することと、よりインターフェースやサービスをシンプルで使いやすい体裁に整えていくことが重要になってくると思います。


筆者紹介──林信行


 フリーランスITジャーナリスト。「iPhoneショック」(日経BP刊)の筆者。ビジネス系セミナーや大学で、携帯電話やモバイルビジネス、ブログ、SNS関連の講演をするかたわら、雑誌やウェブニュース、書籍の執筆も行なう。製品/マーケティングコンサルタントとしての顔も持ち、(株)モディファイ、popIn(株)のアドバイザーも務めている。ハード、ソフト、ウェブの技術だけでなく、アートやデザイン、コンシューマーやIT系企業の文化についても取材/執筆活動をしている。近著は「スティーブ・ジョブズ ー偉大なるクリエイティブディレクターの軌跡」(アスキー・メディアワークス刊)、「アップルの法則」(青春出版社)、「アップルとグーグル」(インプレスR&D社)など。自身のブログは「nobilog2」。


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