月刊アスキー 2008年10月号掲載記事
7月末にスタートした検索エンジン「Cuil(クール)」。元グーグル社員が、「打倒グーグル!」を声高に唱えて開発したため、話題沸騰中だ。
グーグルとクールの違いを要約すると4点ある。まずは、検索結果のレイアウト。リストが縦1列に表示されるグーグルと違って、クールでは2あるいは3段組で並列的に十数個の結果が並ぶ。ロゴや画像も入り、結果全体をビジュアルで捉えられる点で、文字のリストよりもストレスを軽減してくれる。結果をカテゴリー化する上部のタブや、さらに詳細な検索を可能にする右肩のボックスは、展開が速いうえ、検索の視野を広げてくれそうだ。
次に、検索結果の順位をどうはじき出すか。グーグルは人気が基本になっているが、クールは「文脈」を重視。キーワードが持つ多様な意味や、周辺の文脈を読み取るアルゴリズムによって、ロングテール的な小さなサイトも結果表示に呼び出そうというわけだ。
これをサポートするのが、インデックスの規模。クールによると、同サイトはグーグルの3倍に相当する1200億ページのインデックスを作っているという。それによって、検索結果の妥当性が増すというのだ。ただし、この数字自体に疑問が残るうえ、インデックスの規模が必ずしも妥当性に結びつくわけではないと、一部の専門家は見る。
もうひとつの違いはプライバシーへの姿勢。グーグルは検索の精度を高めるために個人の検索履歴を記録しているが、クールはIPアドレスやクッキーなどによる個人情報を記録しない。「重要なのは分析で、ユーザー情報ではありません」と宣言している。
クールの創業者3人のうち、2人はグーグルの巨大なインデキシング・アーキテクチャーを設計していたため、クロールやインデックスの規模は同サイトのウリだ。だが、キーワードだけで地図やレシピを見せるなどの昨今の検索に見られる「小技」がなく、やや粗雑な印象がぬぐえない。
クールに見られる“情報の組織化”は、「クラスティ」や「A9」、「マハロ」など第3世代の検索エンジンが取り組んできた課題だ。ユーザーがこれをどう評価するか、そしてクールがどの程度精度を上げていくのか。勝負はこれから、と見たほうがいい。