本記事は月刊アスキー 2008年8月号に掲載した
特集1「なぜ、この価格で儲かるのか」から抜粋しています
消費者は価格が上下するたび「高い、安い」とだけ反応しがちだ。しかし、そもそも「価格」はどうやって決まるのだろうか? 月刊アスキー8月号では『スタバではグランデを買え!』の著者である吉本佳生氏にその疑問についてお教えいただいたが、ここではそれとは別に今後の価格戦略が気になる業界を挙げてもらった。いずれも環境が激変しつつあるなかで、大胆な変革が迫られている業界である。
自動車はインドからの“黒船来港”で安くなる
国産自動車の場合、新車の販売ルートはそのクルマを作ったメーカーの系列販売店となる。「例えば家電の場合は、同じ商品を販売している量販店同士が価格を競います。しかも、いろいろなメーカーの商品を並べて競合させて売る。しかし、自動車ではそういうことは基本的に起こらないのです」。メーカー側は大衆車から高級車までの幅広いラインナップを揃えて、個々のクルマにいくつかのグレードを設けるのが普通だ。「しかしコンパクトカーを10台売るよりは、高級車を1台売りたいのが本音のはずです。その方が利益が出ますからね」。結果的に、販売店は高額な自動車のセールスに注力する。
現在、原材料(特に鉄)価格の高騰によってクルマの価格は上がる傾向にあり、一方でガソリン価格の高騰 で買い控えも出ている。「もし、インドのタタ・モーターズ『タタ・ナノ』(約30万円)のようなクルマが日本に入って来て、40万円ほどで売られたら、クルマを足として使っているような人たちは、乗り換えるかもしれませんね」。
国立大より安い授業料の私大が登場する?
大学の授業料は、その価格決定プロセスが分かりにくいもののひとつ。「しかもデフレの時代にあって、確実 に値上がりしていました。コストがいくらなのかもはっきりしません」。国立大学の授業料は上昇し続けており、今年5月には財政制度等審議会が国立大学の授業料を私大並みに引き上げるという試案を発表した。そうなると「規模の大きさによるメリットを活かして、国立大学よりも安い水準まで授業料を下げる私立大学が出てきてもおかしくないと思います」と、私大側が価格競争を仕掛ける可能性を吉本氏は指摘する。
さらに国際的な競争にさらされる可能性もある。「ネット上にサイバー大学が生まれている時代。海外の優れた大学の授業をネットで受講できるようになれば、わざわざ高い授業料を払って、国内の大学に行かなくても良くなるかもしれない」。少子化で大学入学者数は将来的には減少することが予想されているが、その時代を前に大胆な低価格で人気を集めるような大学が生まれるかもしれない。