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エンコードテクニック虎の巻 第6回

縞シマノイズを完全消去!【インターレース解除編】

2008年06月19日 21時00分更新

文● 藤山 哲人

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 今回のお題は「縞シマノイズの削除」だ。
 女の子の縞シマパンツはウェルカムなんだが、動きの速いシーンで発生する映像の縞シマノイズは、見た目に美しくないのはもちろん、エンコーダの圧縮率を大きく左右する。
 さらにテレビでオンエアされた映画やテレビをエンコードすると、定期的に発生する縞シマノイズもある。
 今回はこの2つのノイズを完全に削除して、ムービーの高画質化を狙おう!

静止画にすると見える縞シマノイズの謎

 DVカムやテレビ録画した映像を一時停止してみると、縞シマのノイズが発生しているのに気づいた人も多いだろう。

遠目でみると輪郭がボケているようにも見えるが、拡大するとこんなノイズが乗っている

 サッパリ萌えない映像で申し訳ない! しかもDVカムのデータは圧縮率が低いので、23秒の映像で86MBもあるが、サンプルムービーは新幹線.aviをコチラからダウンロードして欲しい。
 これはDVカムで撮影した映像だが、ご覧のように縞シマノイズが発生している。これを「コーミングノイズ」と呼んでいるが、動きの激しいシーンに多く発生する。
 コーミングノイズは発生する原因は、テレビのしくみが原因だ。アナログテレビは、毎秒30フレームの画像を高速に切り替えて表示しているが、フィールドと呼ばれている2枚の未完成の画像を合成して1フレームの映像に見せている。

フィールドとフレーム

トップフィールドとボトムフィールドを合成して1/30秒の1フレームになる

 テレビは横にスライスした525本の走査線で描かれているが、走査線を1本飛ばしにした1/60秒単位のトップフィールドとボトムフィールドが合成された映像だ。これを「インターレース方式」と呼んでいる。
 イラストでは、2つのフィールドを合成し、輪郭のはっきりした映像となっているが、撮影するカメラも1/60秒単位のフィールドでデータを記録しているため、第1フィールド目を撮影し終え第2フィールド目を撮影しようとすると、すでに1/60秒が過ぎている。だから実際には、車が少し動いた状態が第2フィールドとして記録されてしまう。
 そんなフィールドを合成すると、次のような映像になってしまうのだ。

コーミングノイズが発生

実際にはこんな縞シマ映像を見ている

 ただ遠目に見ているぶんでは、縞シマは単なるぼやけとして目に映る。格子柄は遠目で見るとグレーに見えるのと同じ原理だ。ただ動きの遅いものを撮影した場合は、その輪郭に少しコーミングノイズが出るだけだが、1/60秒間に画面の半分も動くような映像だと画面全体にコーミングノイズが発生し、目立ってしまう。これが縞シマの原因なのだ。

見た目の問題じゃない!
圧縮率と画質向上のためのノイズ消去

 DivXの映像は、1/30秒ごとにフレーム単位で記録・描画が行なわれる「プログレッシブ方式」(「ノンインターレース」と呼ばれる場合もある)。エンコードは、縞が入った映像に対して行なわれる。
 だが縞シマもMPEGの不得意な映像のひとつ。圧縮は8×8ピクセル単位に行なわれるが、縞の部分は1ラインごとにトップフィールドとボトムフィールドの映像がブラインドのように互い違いになっているため、非常に圧縮効率が悪いのである!(DVDオーサリングソフトでは、MPEG-2のインターレース映像を出力するが、このエンコードではフィールド単位でデータを圧縮する)
 そこでエンコーダに映像を渡す以前に、コーミングノイズを消しておくと、圧縮効率が向上しデータをコンパクトにできる。その結果、VBRでエンコードすると浮いたデータ容量ぶんだけ、動きの激しいシーンに高いビットレートを割り当てられ高画質にできるのだ。
 つまりインターレースの解除は、見苦しいからするのではなく、データの圧縮効率を高め、高画質化するために行なうのである。

エンコードまめテクニック 

 さざなみが立つ海のシーンは、細かい粒子状の映像になる。こんな場合は、ぼかしフィルタを使って、さざなみの光りの反射をぼかしてやると高画質になる。元映像をぼかすことで、かえって高画質になるという逆転現象だ。
 そのからくりはこんな感じだ。粒子状の細かい映像のままエンコードすると、映像が細かすぎて一定の指定したビットレート内にデータが収まらないため、ブロックノイズ化してしまう。しかしぼかしをかけた映像をエンコードすると、さざなみの周囲が平均化され、圧縮率が向上。あまったデータで、さざなみの動きや特徴的な部分をより細かく描画できるのだ。  

左はぼかしていない映像。エンコーダは粒子をエンコードしようとする。右はぼかした映像。エンコーダは平均化された粒子より、特徴的な波に着目するようになる

 人にとってみれば、さざなみのひとつひとつの粒子がキレイかどうは問題ではなく、全体として揺らいで見えているが問題。そこで小さな粒子はぼかしてしまい、少し大きめのさざなみをより高画質で滑らかにエンコードするというテクニックだ。

(次ページへ続く)

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