高画質、高い堅牢性、高速なAF……。カメラのカタログには、さまざまなうたい文句が並んでいる。しかし、それが本当に信頼できる相棒になりうるかどうかは、短期間の評価ではなかなか見定めにくい。
さまざまな機材を、カメラマンがプロの現場で実際に使用し、その使い勝手を辛口に評価するのが当連載。第1回は、広告関連の現場で活躍するかたわら、Jリーグ横浜F・マリノスのオフィシャルカメラマンの仕事もこなす草野氏に、ニコンD3とスポーツ写真の現場について語ってもらった。
DXフォーマットからFXフォーマットへ
── 草野さんは「D3」の前は同じニコンの「D2Hs/D2X」、その前はコダックの「DCS Pro 14n」(ニコンマウント搭載のフルサイズCMOS搭載機)を使ってたんだよね。
草野 そうそう。14nを勧めたのはあなたじゃないですか(笑)。RAWで撮らないと意味がないカメラだったから、ある意味それで鍛えられた部分はあると思う。
デジタル一眼を使い始めたばっかりのころだったんで、「高校生の問題を小学生に解かせる」みたいな難しさはあったけれども。
── 価格も高かったしね。当時はボディーのみで65万円ぐらいしたと思うけど。あのカメラが出たころ(2003年前半)は、ある意味過渡期で、ニコンで言えばD2XはまだなくてD1XとかD1Hが現行機種だったころだから。
草野 しばらく14nを使って、その後2004年からサッカー(横浜F・マリノス)のオフィシャルフォトのデジタル化に伴ってニコンを併用し始めたけど、コダックの「Photodesk」(コダックのRAW現像ソフト)に比べて「Nikon Capture」(ニコンのRAW現像ソフト)はビューア機能と現像機能が同居していてすごく使いやすいなと思った。最新版の「Capture NX」は一枚一枚をきれいに仕上げるにはいいけどワークフローとして少し使いづらい部分はある。
── 確かに分かりにくい部分があると思う。一番困っているのが、一度保存したパラメーターを再度調整しなおそうとするときとか、「基本画像調整」以外のパラメーターのチェックボックスからチェックが外れて、いちいちチェック入れながら調整するの面倒なときあるんですよね。
── APS-CサイズのD2Hs/D2xからフルサイズのD3への乗り換えだけど、フィーリングにもいろいろと違いがあるでしょう。
草野 いままでのDXフォーマットに比べると、ファインダーが大きく見えるんだけど、最初は大きすぎて違和感があった。自分の目はAPS-Cサイズに慣らされちゃってたんだなと。実際に撮るとズレてたりとか、自分のイメージより対象が全然小さくて、引いた感じの構図になったりとか……。とはいえ、逆もあったんだよね。F5からデジカメに行ったときは、遠いところにある絵を、窓から覗いているような感覚があった。使っていくうちに慣れたけれど。