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プロが使うカメラ 第1回

Jリーグカメラマンが語る、ニコンD3の実力

2008年06月09日 16時00分更新

文● トレンド編集部、聞き手●小林伸/カメラマン

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スポーツ撮影の現場の雰囲気は?


── AFに関してはどう?

草野 制御の方式に癖があるね。D300もそうだと思うけど、コントラストの低い被写体なんかでは止まっちゃって合わせに行かないんだよ。最初は壊れたのかなと思ったけど、そういう仕様らしい。多少時間がかかっても合わせにいってくれる設定が選べるといいよね。

── 精度は上がっているのかな。

草野 体感的にはD2Hs/D2xとあんまり変わらない。ただし、フルサイズのセンサーを積んでいるから、変わらないなら精度は上がっているんだと思う。被写界深度が思いっきり違うから。51点AFは使ってなくて、D2Hs/D2xと同じ11点にして使っている。

── 35mmフルサイズのD3だと、AFポイントが中央に寄っちゃうよね。

草野 いい位置にAFポイントがないから、ピッタリ合わないんだよね。選手は大概前のめりで動いているから、ピントの誤差が出やすい。例えば、ユニホームにピントが合って顔がボケちゃったりとか。10cm程度の距離差があるんで。

── Jリーグの試合では、普通どのぐらい離れて撮ってるの?

草野 400mmのレンズにテレコン付けてだいたい50~60mは離れている。ゴール前まで攻めて来ればすぐそこだけど。いずれにしても全身にピントを合わせることはできないから、被写界深度(ピントの合う範囲:絞りを開くほど合う範囲が狭まる)を稼ぐために絞って撮ることになる。D3の高感度は使えるので、シャッター速度を上げられるけど、絞るぶん露出は1段から1段半暗くなる。

 例えば1/640のシャッター速度で絞りがF2.8の開放だとして、APS-CのD300でISO 1600を使うのと、D3で一段絞ってISO 3200で撮るのでは、どっちがいいかと考えたとき、実際にはトントンかもしれないね。感度によって使えない画像も出てくるから。


DXフォーマットは、逆サイドのフリーキック撮影などに活用


── DXフォーマットに切り替えたりはしている?

草野 ああ、それは使ってる。例えば、逆側のサイドでのフリーキックのときに、壁越しにキーパーを捉えたりとか。DXフォーマットにすると600mmの画角が900mmぐらいになるから、絵になる写真が撮れる。

 ひとつニコンに言いたいのが、フルサイズからAPS-Cにワンアクションで入れるようにしてほしいこと。間に4:5が入っていて不便なんだよね。逆回転すればいいんだけど余裕がないんで、一発で飛べるようにしてほしい。頻繁に切り替えてると、たまに4:5のよく分かんない画像が混じっちゃったりするわけ(笑)。

── スポーツ撮影だともっと高感度がほしい?

草野 Jリーグなら、そこまでいらない気がするな。競技場の照明は明るいように見えて実はそうでもないんだ。サッカースタジアムの中でも暗い部類に入るニッパツ三ツ沢球技場でも、ISO 6400にすればF4.5で1/500秒ぐらいで切れる。500mmでF4ぐらいのレンズを使った場合でも1/3段ぐらい余裕があるんで大丈夫でしょう。一番明るい競技場なら、ISO 1000ぐらいまでの感度でイケると思うし。

── ISOオートみたいな機能は役に立つ?

草野 使えるなと思った。感動的だよ。D3のファームウェアが1.1に上がって、シャッター速度の上限が1/4000秒まで上げられるようになった。下限は1/1250秒にしている。デーゲームの場合、スタンドの影が落ちてる日陰と日向で2段は露出が違う。いままでは日陰のほうに露出を合わせておいて、日向にボールが行ったら「あっ」と言いながら1/4000秒にシャッター速度を変えたりしてたんだけど。

── 確かに日中の試合には使えそうだね。

草野 ファームアップに関しては、多分どこかから声が出たんだろうね。ISO感度オートみたいな機能は、感度が高くても使える写真が撮れるという自信があるからできるんだろうね。

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