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BI―ビジネス・インテリジェンス コンピュータの知性はビジネスを本当に変えるのか?

 

らっしゃい!イオンの御用聞きシステム

2008年05月02日 05時00分更新

文● 加藤 肇

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BIは、人生の節目を推測する


 イオンはクレジットカードの購入履歴の分析によって「あなたがどのライフステージにいるのか」という情報を導き出すことができます。一般的に、人は就職→独身→結婚→出産→子供の独立→リタイアといった人生の節目節目のライフステージで生活が大幅に変わります。つまり、スーパーならより売れる品揃えをするために、子供のいない夫婦なのか、子供がいるなら何人いるのか、あるいは、すでに子供が独立した夫婦なのかといった情報をなるべく正確につかみたいわけです。とはいえ、家族属性の変化をスーパーに報告する人はいません。そこで、購買履歴を分析した結果、米やしょうゆの消費量が増えた人は結婚したと分かりますし、ベビー用品を突然買い始めた人は子供が生まれたのだと店側は推測できるのです。つまり、現代社会においては、あなたがどういう人かを知りたければあなたが何を買っているかを見ればいい、と言っても過言ではないのです。

左が1500万人の会員を持つクレジットカードの「イオンカード」。右は電子マネー「WAON」に対応した発行枚数は約400万枚のWAONカード

左が1500万人の会員を持つクレジットカードの「イオンカード」。右は電子マネー「WAON」に対応した発行枚数は約400万枚のWAONカード

電子マネー対応のレジ。会計時に蓄積されるPOSデータが将来のマーケティング活用されます

電子マネー対応のレジ。会計時に蓄積されるPOSデータが将来のマーケティング活用されます

 しかし、もちろん、この作業ではカードの利用者一人ひとりを特定しているわけではありません。例えばイオンではスーパー1店舗で10~20万種もの商品をそろえており、大きな店では平日5~8万人ものお客さんが利用します。そういった膨大なデータの中から、似たような消費行動の傾向を持つグループを抽出して、そのグループにマッチすると判断された最大公約数的な商品をDMやメール、あるいは店頭で提案していきます。この一連の作業では、膨大なデータを高速に解析して有用な情報のみを取り出す BIの仕組みが必要になります。人の手だけでは到底不可能だったデータ分析を行なうことで、新たな消費を生み出すのです。


BIの行き着く先は究極の御用聞き


 例えば、正確な顧客属性を掴むことができれば、今後このようなマーケティング提案が考えられます。例えば、スーパーの周辺に安全な食材に対する意識が強い小さな子供を抱えたファミリー層がたくさん住んでいるということがわかれば、食品売り場の有機野菜やオーガニック食品コーナーを拡充するといった売上アップの手が打てます。子供の出産や入学のシーズンにあわせてブログを始めるお母さんのために、デジタル1眼レフのカメラをDMで提案するというのは、顧客のライフステージを正確に掴んでいなければできない芸当でしょう。「カメラ好きの男性と使いやすさや持ちやすさを優先する女性向けの提案は違います。そういった女性向けの提案はスーパーのほうが得意です」と神谷さんは言います。

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