海外未発売のDVDがなぜか出ている
海賊版が売られているのは、何も特別なイベントのときだけではない。久保田氏によれば、ボローニャ、ミラノ、フィレンツェといった、どの主要都市においても、「正規のショップにも関わらず、日本の音楽CDやゲームの海賊版が普通に売られていた」とのこと。
さらに「イタリアだけでなく、フランスやスペインでも、権利処理の済んでいない著作物がいろいろ流通している」というから、状況は深刻だ。
しかも、イタリアの特徴は、海賊版が正規版とまったく同じ値段ということ。「中国のように10分の1という話ではない」(久保田氏)のだ。
ここまで白昼堂々、海賊版をおおっぴらに扱っていたら、すぐに警察が取り締まりそうにも思えるが、それは日本人の感覚だろう。
「日本は非常に進んでいて、警察の能力が高いので、秋葉原で売っている海賊版の摘発などに関しても、刑事手続きが可能になっている。しかしながら、海外についてまず普通のお店でやっている海賊版の退治ですら時間がかかるし、場合によっては刑事事件として動かないこともある」(久保田氏)
久保田氏は「権利主張しない以上は、別に使ってもいいんだなと見られてしまう。イタリアの財務警察は『ようやく来たね』という感じだった」と、現地の雰囲気を伝える。
「著作権の一番基本的なところは、無体財産なので、言わなければ財産を財産として見てくれない。権利を主張するという最低限のことをしなくては、われわれの権利は守れない。当たり前のことなんだけど痛感した」(久保田氏)
結局、海外において、フェアな著作権ビジネスを成立させるためには、うるさく言って積極的に関与していくしかないようだ。