「海賊版問題が、一向に改善されていない」として、アメリカが中国をWTOに提訴したことがつい最近話題になった。
ここでいう“海賊版”とはハリウッド映画などの動画コンテンツや、洋楽などの音楽コンテンツを指す。これには日本や欧米も第三国として参加し、アメリカ対中国の対決にとどまらず、先進国対中国の対決と言ってもいい構図ができている。
海賊版ソフトは減ってはいるのだが……
映像や音楽コンテンツの海賊版が、どのぐらい中国で流通しているかを数値化した統計は手元にないが、参考までに“BSA”(Business Software Alliance)の資料から、似たような状況であると想像されるパソコンソフトの海賊版利用率の統計を引用してみる。
これによると、2006年のパソコンソフトの海賊版利用率は92%から82%まで下がってきているという。だが先進諸国から見ると、依然として中国では、路上や普通の店舗でごく普通に海賊版のコンテンツが販売されており、「ちっとも改善していない」ように見えるのだろう。
中国側は女性の呉儀副首相が先頭に立ち「中国だけを名指しするのはおかしい。日本だって長い年月をかけて海賊版を解決しただろう。もっとほかに海賊版が浸透している国はいくらでもある!」と逆ギレといってもいいような言い訳をしている。
ベトナム政府に売り込む中国のソフトメーカー
確かにBSAの統計では中国は最悪ではない。
海賊版を浸透率、つまり割合でみると、中国よりもひどい状況なのはベトナムだ。同国はここ数年90%以上の浸透率をキープ(?)している。ベトナムも今年初めにWTOに加入したこともあり、海賊版に対する圧力がかかっている。例えば、「ベトナム政府は率先して正規版ソフトを使うべし」といった感じだ。
中国のキングソフトはそんな海賊版天国のベトナムで、日本でも販売しているオフィス製品『キングソフトオフィス2007』と、セキュリティー製品『キングソフトインターネットセキュリティ2006』を販売し、ベトナム政府に売り込んでいくことを発表した。救済策と称してライバル製品より安い互換製品をリリースする商売は互換製品を安く投入するビジネススタイルで、海賊版対策の経験のある中国企業らしいやり方といえよう。
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