検索に隠された「業務効率改善」のヒント
エンタープライズ・サーチにおいても、この意図のデータベースの活用はきわめて重要だろう。
特定のキーワードの入力の頻度が高ければ、メニュー構成を変更したりすることで、ユーザーがそのキーワードの情報にアクセスしやすくする工夫が必要であるかもしれない。
例えば、「経費精算システム」と「使い方」というキーワードでサーチする頻度が多いなら、経費精算システムのマニュアルをポータルのメニュー上で発見しやすい場所に置くことで、ユーザーの生産性を向上できるかもしれない。さらには、経費精算システムのユーザビリティーに根本的な問題があるの可能性もある。ユーザーにさらなるヒアリングを行なって問題点を絞り込み、システムのユーザーインターフェースの改善ができれば、生産性をさらに向上できる可能性がある。
ここで重要なポイントは、ユーザーが無意識のうちに、重要な知識を提供してくれるということだ。
一番最初のインターネットの例では、ユーザーは「自分はパソコンが買いたいのだ」と明示的に言っているわけではない。サーチのキーワードにより、暗黙的に「この私はパソコンを買いたいかもしれませんよ」という知識を提供してくれる。後者の例では、ユーザーは「経費精算システムの操作が分かりにくい」と明示的に言っているわけではないが、同様に、サーチのキーワードとして暗黙的に情報を提供してくれている。
ユーザーが(例えば、アンケートに回答するなどの方法で)明示的には情報を提供してくれない場合でも、サーチエンジンを介して情報を入手することができるのである。
多くのエンタープライズ・サーチのシステムでは、ユーザーが入力したキーワードの蓄積を充分に活用できていないケースが多いのではないか。しかし、社内にあるユーザーの「意図のデータベース」にはきわめて貴重な情報が内包されている可能性が高いことを認識すべきであろう。
筆者紹介-栗原潔
(株)テックバイザージェイピー代表、弁理士。日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より独立。先進ITと知財を中心としたコンサルティング業務に従事している。東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。主な訳書に『ライフサイクル・イノベーション』(ジェフリー・ムーア著、翔泳社刊)がある。
この連載の記事
-
最終回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(9)――多様な領域に広がるサーチの可能性 -
第17回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(7)――バーチカルサーチの可能性 -
第16回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(6)――真の意味のマルチメディアサーチの可能性 -
第15回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(5)――サーチとBIとのもうひとつの関係 -
第14回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(4)――結構親密なサーチとBIの関係 -
第13回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(3)――柔軟性が求められるランキングアルゴリズムの実装 -
第12回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(2)――ポータルとしてのサーチ -
第11回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(1) -
第10回
トピックス
いまあえてWeb 2.0を分析する(10)――企業内Web 2.0と切っても切れないエンタープライズサーチ -
第9回
トピックス
いまあえてWeb 2.0を分析する(9)――Web 2.0系テクノロジーはどこが優れているのか? - この連載の一覧へ