このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

栗原潔の“エンタープライズ・コンピューティング新世紀” 第18回

エンタープライズサーチの真の価値を探る(8)――「意図のデータベース」

2008年01月08日 15時17分更新

文● 栗原潔

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

検索に隠された「業務効率改善」のヒント


 エンタープライズ・サーチにおいても、この意図のデータベースの活用はきわめて重要だろう。

 特定のキーワードの入力の頻度が高ければ、メニュー構成を変更したりすることで、ユーザーがそのキーワードの情報にアクセスしやすくする工夫が必要であるかもしれない。

 例えば、「経費精算システム」と「使い方」というキーワードでサーチする頻度が多いなら、経費精算システムのマニュアルをポータルのメニュー上で発見しやすい場所に置くことで、ユーザーの生産性を向上できるかもしれない。さらには、経費精算システムのユーザビリティーに根本的な問題があるの可能性もある。ユーザーにさらなるヒアリングを行なって問題点を絞り込み、システムのユーザーインターフェースの改善ができれば、生産性をさらに向上できる可能性がある。

 ここで重要なポイントは、ユーザーが無意識のうちに、重要な知識を提供してくれるということだ。

 一番最初のインターネットの例では、ユーザーは「自分はパソコンが買いたいのだ」と明示的に言っているわけではない。サーチのキーワードにより、暗黙的に「この私はパソコンを買いたいかもしれませんよ」という知識を提供してくれる。後者の例では、ユーザーは「経費精算システムの操作が分かりにくい」と明示的に言っているわけではないが、同様に、サーチのキーワードとして暗黙的に情報を提供してくれている。

 ユーザーが(例えば、アンケートに回答するなどの方法で)明示的には情報を提供してくれない場合でも、サーチエンジンを介して情報を入手することができるのである。

 多くのエンタープライズ・サーチのシステムでは、ユーザーが入力したキーワードの蓄積を充分に活用できていないケースが多いのではないか。しかし、社内にあるユーザーの「意図のデータベース」にはきわめて貴重な情報が内包されている可能性が高いことを認識すべきであろう。


筆者紹介-栗原潔

著者近影 - 栗原潔さん

(株)テックバイザージェイピー代表、弁理士。日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より独立。先進ITと知財を中心としたコンサルティング業務に従事している。東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。主な訳書に『ライフサイクル・イノベーション』(ジェフリー・ムーア著、翔泳社刊)がある。


前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン