MySpaceで起こった事件
だが、そのためとも言える騒ぎも起きている。
この春、大きなニュースとなったのは、米SNS大手「MySpace」で、一般の支持者が立てたオバマを応援するコミュニティーサイトが、オバマの選挙陣営に奪取されたというものだ。
ロサンジェルス在住・29歳のジョー・アンソニー(Joe Anthony)は、2004年にオバマ応援サイトをMySpace内に作り、その人脈を広げながら地道にサイト運営を行なってきた。
そのフレンド数は、2年半で16万人にもなっていた。これに目をつけたオバマ陣営は、この非公式のファンサイトを公式サイトの傘下に入れようと、MySpaceの運営を行なう米News Corporation社に働きかけ、その運営権利権を陣営側に移管してしまった。5月1日のことだ。
当日のアンソニーさんの日記には、陣営やサイト運営者に送った質問文の内容と、「オバマは僕の一票をなくした」というコメントが掲載された。その後、テレビ、雑誌で話題に上ると、MySpace側は、アンソニーさんが培ってきた登録フレンドを彼に戻すといった処置を行なった。
オバマ自身がアンソニーに電話をし、これまでの貢献に感謝する旨を伝え、陣営側の対応の悪さを陳謝した様子などもすべて彼の日記に書かれている。この時、アンソニーはネット上で築き上げた友人たちから何百もの励ましのメールを受け取った。ともかくも数週間は、米メディアをこの話題が賑わせていた。YouTubeといいSNSといい、その使い方を熟知する個人の力はもはや図り知れない。
米国の女版・みのもんた……
話は少し反れるが、「大統領選の盛り上がりへの貢献」というつながりで、最近行なわれた応援演説についても触れておこうと思う。
先だって、12月8~9日のオバマ側の応援演説に、カリスマ司会者のオプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)が駆けつけた。日本ではあまり知られていないが彼女の影響力は、アメリカでは絶大なものだ。番組の視聴率は抜群。彼女が番組で書籍をひとこと褒めれば、視聴者が書店に駆けつける。その言動が、多くの女性たちの口コミにも影響するところは、まさに「アメリカの女版みのもんた」といったところだ。
そう言えば、去年、赤バージョンのiPod nanoが登場したときに、U2のボーカリスト、ボノ(Bono)とシカゴのアップルストアに訪れて、マスコミもファンも大騒ぎしたこともあった。
そのウィンフリーが、アイオワ(1月3日に最初の党員集会開催)、ニューハンプシャー(1月8日に最初の予備選)、サウスカロライナの集会に参加すると、延べ7万人もの聴衆が集まった。
昔からハリウッドセレブからの応援表明がとかく話題となるのだが、今回の応援演説はさらに輪をかけ大盛り上がりを見せ、数日の間、選挙関係の報道ネタもそれ一色になっていた。その翌日には、「1人の政治家を支持すべきじゃない」「あなたのファンを辞める」などといった批判のメールや電話を受け取ったことでまた話題になった。
一方、25年も続く人気深夜番組「Late Show With David Letterman」(レイトショー・ウィズ・デイビッド・レターマン)でも、お決まりのブラックジョークが候補者たちをここ数日、ターゲットしている。こういったネタは、候補者を応援するしないにかかわらず、アメリカ人は大好きなのだ。
現時点で報じられている各世論調査をみていても、オバマ対ヒラリーの民主党指名争いは、まさにデッドヒートといった感じだ。党員集会・予備選挙の開始が1月に迫り、毎日の話題はつきない。今日はヒラリーに3ポイント! 今日はオバマに5ポイント入った! といった感じで、まるで接戦のスポーツ観戦にも似た賑わいなのである。
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