「かつて、私たちの先祖の誰がこんな状況を想像したでしょうか? 黒人と女性のどちらを大統領として選ぶべきか、という時代がくるなんて」と米テレビの画面でニュースキャスターが呟いた。
ウェブソーシャルで展開される戦い
米国では、今まさに民主党の指名候補選びが毎日のホットな話題となっている。ご存知のように黒人候補のバラック・オバマ上院議員とヒラリー・クリントン上院議員が大接戦を演じている。8日のニューハンプシャー州予備選では、事前の世論調査などでオバマ氏が大きくリードしたかと思えば、ヒラリーが必死の巻き返しで勝利した。
この前日、YouTubeには「ヒラリーが泣いた」と題した映像がアップされ嘘泣きか本物かのコメントが、勢いよく付いた。これは、ニューハンプシャーで開かれた支持者との懇談で今後の選挙活動をどう進めるのかを質問されたヒラリー候補が、「簡単なことじゃないのよ。でも自分が正しいと信じているからこそ突き進んでいける」と声を詰まらせたのだが、それを新聞、テレビなど米国のメディアが一斉に取り上げ、その直後にYouTubeにも関係映像が次々とアップされたという経緯だ。
1週間で58万ビュー、4000以上のコメントが付いている。論点は、「ウソ泣き」か「本物の涙」かだ。
米ABC放送は、ソーシャルサイト「Facebook」と提携した大統領選報道を行なっているが、そのFacebook上のビデオニュースでも「ヒラリーの涙」映像がアップされた。この特設サイトでは即座にアンケートを行ない、ニューハンプシャーの投票に「効果」がある否かを訊ねた。否定派は58%、肯定派は25%、影響なしが19%だった。
このヒラリーの涙が8日の勝利に果たしてどう影響したかのかは定かではない。しかし翌日の9日、ヒラリーが「勝利」の喜びを伝える会場に集まった聴衆たちの中には若者の姿が多く、「若者層の支持を伸ばしているのは、ウェブソーシャルメディアの効果だろう」と報じる米国メディアもあった。
ウェブソーシャルで展開される戦い
そんな中13日には「I Got a Crush...On Hillary」(ヒラリーにメロメロ)とタイトルの付いたヒラリー応援歌がYouTubeにアップされ、17日までに40万ビュー、2400のコメントが付いている。
10、20代のアマチュア・ミュージシャンたちが自身の制作した音楽プロモーションビデオをYouTubeや「MySpace」で公開し、活動を広げるといったことが盛んになってきているが、この映像を作ったのもそんな一人。
DaveDays(活動名)は
「キミは最高にセクシーな候補者さ。僕は政治なんてわからないけれどキミの脚・・・キミの瞳・・・ああ、もうキミにメロメロさ~。キミが負けるなんてことないだろ」
――とギターを弾きながら熱く歌う。
もちろん、これは「オバマガール」(関連記事)への対抗ソングでもある。
今回の大統領選では、若い世代層に「選挙、候補者たちへ関心を持たせる」といった役割をYouTubeやMySpace、Facebookといったウェブソーシャルが担っているのは確かだ。さて、これから残りの選挙戦にはどう影響を与えていくだろうか。