SaaS・ASPのメリット・デメリット
次に、クライアント・サーバー型のパッケージソフトと、ネット越しにサービスを利用するSaaS・ASPを比較したときの、メリットとデメリットを見ていこう。メリットのほうは右の表を見れば一目瞭然だが、デメリットには何があるのだろうか。
「一番大きな問題は、大切なデータを第三者に預けてしまうことに対する不安感です。これは従来のASPから言われ続けてきた問題で、簡単に言ってしまえば、そのベンダーが信用できるかどうかに尽きます」
これは私たちが、自分のお金を預けるときに似ている。名の通った銀行や証券会社なら安心して預けるが、聞いたこともない業者や個人には預けることをためらうだろう。だからこれは、自然な反応といえる。
「どうしても預けるのに不安がある、あるいは会社のルールとして他社に預けることを禁止している場合は、SaaSやASPは利用できません」
また、細かいところまで好きなようにカスタマイズしたいというユーザーにも、SaaS・ASPは向かない。いくら最近のサービスがカスタマイズ可能になったとはいっても、それにはおのずと限界があるのだ。
「コードを全部書き換えなければならないようなカスタマイズはできません。パフォーマンスや信頼性も含めて、全部自分たちでコントロールしなければ気が済まないようなユーザーには、本質的にSaaS・ASPは向かないのです」
機能の点でも目に見えない落とし穴がある。それは、パッケージソフトとSaaS・ASPの両方を提供しているベンダーの場合、後者には機能を落としたものしか提供していない場合があることだ。「高機能が欲しければ、パッケージ製品をお求めください」ということで、そのあたりも導入前にチェックする必要がありそうだ。
著者・城田真琴(しろた まこと)氏プロフィール
野村総合研究所主任研究員。IT動向のリサーチと分析を行うITアナリストとして活躍中。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門はBI、SOA、EAなど。著書に『SaaSで激変するソフトウェア・ビジネス』(毎日コミュニケーションズ)などがある。