日本オラクルは9月10日、プレス向けにSCM(Supply Chain Management)への取り組みを紹介する説明会を開催した。なお、同日は具体的な製品発売などの発表項目はなく、純粋な戦略説明の場となった。
統合ベンダーであるオラクルの強みを強調
まず、全体的な方針を説明した日本オラクル執行役員アプリケーションビジネス推進本部長の藤本 寛氏は、「SCMのビジネスは昨年に続いて今年も好調で、成長を牽引する重要製品となっている」とし、SCMへの取り組みが同社にとっても重要だとの認識を示した。
また、藤本氏は「ITやソフトウェアは、以前はコスト削減の手段として位置づけられることが多かったが、現在ではユーザー企業の競争優位の源泉をもたらすものとなっている」と説明した。企業の競争優位の源泉の要素には、「プロダクト・リーダーシップ」「カスタマー・インティマシー」「オペレーショナル・エクセレンス」があり、SCMはユーザー企業にとっては、オペレーショナル・エクセレンスを実現する有力な手段となるという。
最近では、ソフトウェアやソリューションの単位ではなく、この“競争優位の実現”という観点でシステムを構築する例が増えていて、単一製品の導入に留まらず、複数の製品を組み合わせて導入することも多くなっている。ただ、この際、個々の技術に特化したベンダーがそれぞれの独自技術で開発したアプリケーションを組み合わせると統合が難しいのが課題。これに対して、同社は統合された共通基盤上に標準技術に基づくアプリケーション群を統合して提供するアプローチを採っており、優れたソリューション提供が可能だと藤本氏はアピールした。
高度な需要予測を実現する「Demantra」
続いて、アプリケーションビジネス推進本部ソリューションビジネス推進部シニアディレクターの岡田行秀氏が、具体的なソリューションについて説明した。岡田氏によると、今後同社が推進していくのは、「多拠点製販統合」「戦略調達のサプライヤー・コラボレーション」「販売垂直立上げのディーラー・ネットワーク」「グローバルSCMの実行管理」「製品情報のグローバル一元管理」「需要主導型サプライチェーン経営」の6つ。この中で強調されたのが、2008年度に最新版が提供開始される予定の「Oracle Demantra」だ。Demantraは需要予測エンジンで、同社では“需要マネジメント”と位置づけている。
岡田氏は、「究極的なSCMの姿は、“完全個別受注生産体制”と“完全需要予測型”の2通りしかない」と話す。自動車などの大型商品に関しては、主要メーカーが既に完全受注生産体制に移行しつつあり、在庫を一切持たない形になりつつある。一方、一般向け消費財等では、可能な限り正確に需要を予測して生産、販売を行なう需要予測型とならざるを得ず、正確な需要予測ができるかどうかが重要な問題となる。Demantraでは27種の予測計算の数式を組み合わせ、ベイズ統計の手法を使って最適と思われる結果を導き出すことで、かつての需要予測技術で得られた予測精度からさらに10%以上高精度な予測が可能になるという。
このほか、2008年度中に最新版の投入が予定されている製品としては、実行系に関するもので、ロジスティックスの可視化、自動化、最適化を行なう「Oracle Transportation Management」、フロントエンド側で製品見積を自動化するための「Oracle Configurator」なども紹介された。