パソコンの組み立ては9人一組のコンベア式のラインで行なわれる。
ノートPCとして必要な機能を全部備えて580gという軽量ミニPC「LOOX U」。もちろん島根富士通のラインで製造される。 |
ライン上では1人分の作業域が決まっている(1人あたり1分弱)。そのエリア内で作業が終了しない場合はライン外のリーダーにヘルプを求めることになるが、それでも遅れた場合はコンベア全体を停止する。
ただ、停止が発生することは悪いこととは考えていない。
「従業員に止める勇気を持つよう指導し、ようやくその意義が広まりつつある」(山森島根富士通社長)という。
止まるのには理由があり、また作業ミスもどうしても発生する。その問題点を顕在化させることで新たな効率化のアイデアや、不良品を出さないことに繋がる。
ライン数は現在最大で20。1つのラインでは1日の間に何度も製造する機種を変更するほか、BTOモデルでも1台単位で異なるスペックに対応できる。
ラインの先頭部分にある状況を示す看板。ラインを停止した回数や時間、今日製造するモデルを変更した段替回数が表示される。その段替の目標時間は1回あたりわずか1分。柔軟な製造体制が築かれていることがわかる。 | ライン上では5台組み立てるごとに写真のパネルが流されている。5台ごとに組み立てに用いる部材の残り数を各々が確認することで、部品の組み込みミスによる不良を防げる仕組みになっている。 |
ただ、改善への努力は現場だけでは十分ではない。たとえばプリント基板の製造ラインを効率よく稼働するために、基板上のパーツの配置をバランス良くなるよう開発部隊が意識する。
また営業サイドが、顧客ではなく社内的な事情で、急な注文を工場に出すようなことを避ける。真の効率化には全社的な取り組みが必要なのだ。
これらの努力により、海外生産に対し、トータルでメリットを持つことができているが、今後もコストダウン競争は続き、ただの汎用的なパソコンではコスト競争はさらに厳しくなる。そこで、いかに他メーカーとは違う、魅力あるパソコンを生み出すか。この部分も重要になるかもしれない。
※この記事は『月刊アスキー 8月号』(6月23日発売)から転載したものです。