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転職経験あり! 仕事人たちのストーリー 第2回

トラック運転手からIT業界へ 30代での転職成功の秘訣

2006年07月13日 00時00分更新

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上坂太志氏(32) 株式会社ドワンゴ プロジェクトリーダー

上坂太志氏(32)
株式会社ドワンゴ プロジェクトリーダー

携帯電話向けコンテンツの開発などを行なう株式会社ドワンゴで、プロジェクトリーダーを務める上坂太志さん(32)。家業であったトラック運転手からIT業界へ20代半ばで転職。派遣社員として実務経験を積みながら7月に同社の正社員への雇用変更を果たし、現在プロジェクトの要となっている。そんな上坂さんに、転職成功の秘訣を聞いた。

上坂太志氏の転職およびキャリアアップ成功のポイント
・自己の転職意思を明確にしたことで、転職に必要な行動も明確にできた
・実務経験の少なさや、年齢のハンデを派遣社員という雇用形態を選択することで克服した
・スキルと評価を向上させるために何事も率先して行動した
・ただの話上手にあらず。業務に適切なコミュニケーション能力を備える努力をした
・自身の専門枠にとらわれない業務意識を持つようにした

目標に向かって動き出した時 姿勢や意識に変化が現れた

 上坂さんは高校卒業後、家業を手伝ってトラック運転手をしていた。しかし、18歳の時に交通事故で足を負傷していたこともあり、自分の将来を考えて、別の仕事での可能性を探っていた。そして25歳のある日、IT業界で働くことを決意した。

「当時は、テレビや雑誌でWindows98を大々的に取り上げていました。それで『これからはコンピュータの時代だ』と、IT業界に飛び込みました。とはいえ、これまでコンピュータとはまったく無縁でしたし、この業界では遅いスタート。不安だらけでしたが『自分でモノを作り上げたい』という思いだけは、人一倍強かったですね」

 そこで上坂さんは専門学校に通い、コンピュータをイチから勉強。卒業後に汎用機サービス会社へ就職し、さまざまな企業へ出向しては汎用機の運用と開発を行なった。しかし、コンピュータの経験が浅い上坂さんにとって、汎用機は分からないことだらけ。そのため、辛いことの連続だったという。

「上司に『実務で使用しているデータベースの概要は?』と聞かれても、何と答えていいのか分かりませんでした。“教えてもらうより見て学ぶ”という職場環境だったこともあり、言われるままに仕事をするのが精一杯。周囲から『バカだ、使えない』と言われる毎日が、4年ほど続きました。唯一楽しかったのは、プログラミング言語の勉強。この仕事をしながら、COBOL/SからPL/Iまでを習得しました」

 辛い毎日を送る上坂さんだったが、暇を見つけては新しい知識や技術を勉強した。仕事から帰ると、実家の仕事のWebサイトを作ったりもした。そうした中でFlashに出会い、そのおもしろさに目覚める。やがて上坂さんはWebそのものに興味を抱き、オープン系システムの開発をしたいと考えるに至った。そこで、これまでの仕事を続けながら夜間専門学校に通い、転職を目指してWebの勉強を開始した。

「転職という大きな目標に向かって動き出した時、仕事に対する姿勢にも変化が現れました。まず、他人とよく会話するようになったこと。次に、業務全般を積極的に覚えようと動き出したこと。そして、つねに“5W1H”を意識して仕事に取り組むようになったことです。転職に役立つことならどんなことでもしようという気持ちが、意識や行動にも及んだんでしょうね」

30歳からの転職であっても あきらめずに成功を目指す

 上坂さんは夜間専門学校が修了すると、これまで5年ほど勤めた会社を退職し、転職活動を開始。オープン系システムの開発に携われる企業を探した。しかし、4カ月間に5社の面接を受けた結果は、すべて不採用。その理由は「PHPやJAVAを習得していない」「30歳では年齢を取り過ぎている」といったもの。中には「PL/Iのスキルを生かした仕事なら採用する」という企業もあったが、上坂さんはオープン系システムにこだわった。そこで上坂さんは、ひとまず派遣会社に登録することにした。

「派遣社員であれば、僕でもオープン系システムに携われる余地がありました。だから、まずは実務スキルを身に付けて、その後に改めて正社員を目指して転職活動しようと考えたんです」

 派遣社員となった上坂さんに与えられた仕事は、毎日400~500枚の画像を手動で変換する作業だった。上坂さんは地道に作業を続けたが、6カ月ほどして別の派遣会社に登録。新たな派遣先では、ホームページのリニューアル作業に加え、パスワード管理システムや会議室予約システムの開発にも携わることになった。

「当時はHTMLを触って間もない頃だったので、右も左も分からない中での仕事でした。でも、派遣先の社員の方々が親切に教えてくれたり、みんなで相談して課題に挑んだりできました。だから、僕は少しでも早く戦力になれるようにと、その日に教えてもらったことや課題の解決策を、家に帰ってから試したり応用したりして勉強しました。寝る時間はほとんどなかったですね。おかげで半年間でASP(Active Server Pages)からPHP、Perlまで、データベースもPostgreSQLやOracleの実務スキルを習得。PC用Webコンテンツは、基本設計から本番運用まで任せてもらえるようになりました」

 次々とスキルを身に付けていった上坂さんは、昨年12月半ばから株式会社ドワンゴへ派遣され、携帯電話向けコンテンツに関連する管理ツールを作ることになった。そして、時には企画や業務上のアイデアを提案し、会社側もそれを採用した。そんな仕事をしているうちに「そろそろ正社員として働きたい」という気持ちが沸き上がり、登録している派遣会社に相談。それを知ったドワンゴは、上坂さんを正社員として迎えるべく声をかけた。仕事やスキル向上にひたむきな姿勢と、コミュニケーション能力が評価されたのだ。

仕事をする上で求められる コミュニケーション能力とは?

 上坂さんの転職に最も寄与したのは、プロジェクトチームの要となるコミュニケーション能力だった。彼は元々、話すことが好きだったそうだが、それとコミュニケーション能力は“似て非なるもの”だと言う。

「コミュニケーション能力とは、自分の考えていることを、相手が即座に分かるように伝えることだと思います。いくら知識があっても、強い信念があっても、それを明確に伝えられなければ仕事は成立しません。また、時には自分の弱点や苦手なことであっても、相手に伝えなければならないこともあります。特にチームで仕事をする場合、弱点を知った上で考えたり行動した方が、業務がスムーズに進行しますからね」

 そんな上坂さんが自らの転職経験を振り返りつつ、これから転職を考えているエンジニアに、こう助言する。

「僕が転職活動の面接でよく聞かれたのは、『何か先頭に立ってやった仕事はありますか?』ということでした。この言葉を、単にプログラマという枠にとどまらず、常に前進していく姿勢が問われているのだと僕は解釈しました。たとえばドワンゴの場合、業務改善案を提案したり、よりよいシステムを作るために上流行程へ進みたい、自分の企画を実現したい、という意志を実行できる人を歓迎します。こうしたマインドや行動が、部署に対し活気を与えることに繋がるからです。ともあれ、エンジニアとはモノを作る“職人”なのだという気概も忘れずに。漫然と作業をするのではなく、起こりうる事態を常に考えながらモノ作りを追求してください。これは僕の課題でもありますが(笑)」

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