カーテン開閉のヒモを引っ張ると、最初は必ず反対方向に動く。
On the first pull of the cord, the drapes will move the wrong way.
(レジャ・ジャンセンの法則)
1993年の『マーフィーの法則』から足かけ15年、約1600個まで法則が追加された『21世紀版 マーフィーの法則』が発売された。そのコンピューターにおける有効性を証明する。
滅多に起きないことは、
必ず起こることである。
世の中のほとんどすべてのものは、最悪のパターンに向かう--これが、マーフィーの法則である。乗ろうとしたエレベータがどの階にいるかは、各階の利用者数や時間帯によって決まってくるはずだ。ところが、マーフィーの法則では、あなたが急いでいるときほどエレベータがほかの階にいる確率が高くなる。
こうしたマーフィーの確率論は、あまり科学的ではないように見えるかもしれない。しかし、現実は、むしろマーフィーの法則にしたがうことが少なくないことがさまざまな形で報告されている。英語辞書の最高峰『Oxford English Dictionary』で「マーフィーの法則(Murphy's Law)」を引くと、初出は、1958年の『ネーション(The Nation)』という政治雑誌だが、1970年の『サイエンティフィック・アメリカン』など科学技術系の出版物で使われた例が少なくない。
まだ自動車というものがめずらしく、オハイオ州に2台しかなかった時代に、その2台の衝突事故が起こったという話は有名である。いかに学校で教えてくれる確率計算が役に立たないか、滅多に起きないことは、えてして起こるということなのだ。「カーテン開閉のヒモ~」(レジャ・ジャンセンの法則)は、読者も経験しているマーフィー的確率論の典型といえる。参考法則もご覧アレ。
今回の参考法則
●偶然の出来事は、まとまって一度に起こりやすい。
Random events tend to occur in groups.
(ティルザックの確率の仮定)
●電話中に、ペンがあると、紙がない。紙があると、ペンがない。両方あると、書き留めるメッセージがない。
If you have a pen, there's no paper.If you have paper, there's no pen.If you have both, there's no message.
(フランクの電話現象)
●チャンスは、もっとも都合が悪いときにやって来る。
Opportunity always knocks at the least opportune moment.
(ドゥシャームの教訓)
火星探査機の技術が、
サーバーを守っている
いまどきのコンピュータにおけるマーフィーの法則について、日本IBMの箱崎事業所におじゃまして聞いてみた。
パソコンとサーバーでは、冷却や電源など、ハードウェアの基礎体力ともいえるものが違っている。しかし、本当の違いは目に見えない部分にある。
コンピュータで最も恐ろしいトラブルといえば、メモリー・エラーである。IBMのサーバーでは、チップキル、メモリ・ミラーリング、オンライン・スペア・メモリといった手法で徹底的にメモリー・エラー対策が施されている(実装内容はサーバーのモデルによる)。とくに、チップキルは、NASAの火星探査機で使われた技術で、他社との大きな差別化といえる。ちょっと難しい話になるが、通常1ビットしかないエラー訂正ビット(パリティビット)を、4ビットまでのエラー訂正を可能とすることで、約150倍の安全性を確保するのだ。
このほかにも、エラーを予測したり、遠隔地からサーバーの状態を監視したりなど徹底した安全対策がなされている。実に、マーフィーの法則の余地をまったくなくすることを目指したハードウェアといってよい。
それじゃ、サーバーにおいてマーフィー的なことってあるんですかね? と聞くと、どうもあるらしい。「トラブルは、休日に発生する。とくに、関係者が呼び出されるトラブルは、3連休のまん中の日にその発生確率が最も高くなる」とまとめてみた。
実は、休日にトラブルが発生するのには、理由があるそうだ。たくさんの人がアクセスするサーバーは、休日を利用して設定変更したり、移行作業をしたりすることが多いからなのだ。つまり、まったく違うレベルの要因によってマーフィーの法則はやってくる。そのためにも、せめてハードウェアの安全対策は完璧でありたい。だって、休日はやっぱり休みたいでしょう。ということで次回に続く。
『21世紀版 マーフィーの法則』
アーサー・ブロック 著
松澤喜好・松澤千晶訳
アスキー刊
定価:本体1600円+税
ISBN:978-4-7561-4957-2
米国版の26周年記念版“Murphy's Law: The 26th Anniversary Edition”の日本語全訳。全面改定により法則が大量に追加され約1600個を収録。
http://www.ascii.co.jp/m/