倍のビットレートは高音質化に寄与するか?
iTunes StoreでDRMフリーの楽曲が買える“iTunes Plus”。コピーやバックアップの制限がない点や、iPod以外の機種でも再生できる点に関心が集まっているが、従来の128kbpsより高品位な256kbpsエンコードのAACを採用したという点も見逃せないポイントだ。
しかし、ビットレートが倍になったことがどの程度音質面に寄与するのか、正しく理解するのは容易ではない。そこで今回のレビューでは、周波数特性と実際の試聴の両面からiTunes Plusの音質について検証した。ユーザーにとって、iTunes Plusの高音質化がどの程度意味を持つのか? それを判断できる材料を提供したいと思う。
検証に使用した機材
- PowerMac G5 Quad-2.5GHz
- iTunes 7.2
- M-Audio Firewire1814 (オーディオインターフェイス)
- Mackie Design Onyx 1220 (アナログミキサー)
- Dynaudio BM-6A (アンプ内蔵ステレオスピーカー)
- Dynaudio BM-10S (アンプ内蔵サブウーファー)
- 第5世代iPod 80GB
- ETYMOTIC RESEARCH ER-4P (インイヤーヘッドホン)
これに加え、周波数特性検証のため、『Pro Tools HD w/192 I/O』を使用している。
周波数特性のチェック
まずは周波数特性を見ていこう。周波数特性は極めて定量的な計測であり、主観が介在しにくい分析である。試聴前にAACエンコードした楽曲がどのような特性を示すのか知っておいて損はないだろう。
テスト方法は簡単で、128kbpsのAAC、256kbpsのAAC、CDからリッピングしたWAVEファイルの合計3種をiTunesで再生し、Firewire1814から光出力。Pro Tools HDの192 I/Oに光入力するというものだ。
その後、24bit/48kHzのフォーマットで各楽曲の冒頭を録音し、『Waves PAZ Phychoacoustic Anazyzer』で周波数特性をグラフ化した。左側が低周波、右側が高周波、上に行くほど出力レベルは高く、下に行くほど出力レベルは小さい。WAVの特性と比べて、128kbpsのAACと256kbpsのAACの特性がどのくらい乖離しているかがポイントとなる。
特性および試聴のために使用した楽曲は、ハイファイな楽曲としてCeltic Womanの『Beyond the Sea』、J-Popから宇多田ヒカルの『For You』、クラシックの器楽曲として、ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチのチェロ独奏『J.S. Bach Suite for Solo Cello No. 1 in G Major, BWV 1007 I - Prelude』の3曲をセレクトした (リンクのクリックでiTunes Storeが開きます)。
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