高域の情報量に如実な違いが出る
まずはBeyond the seaの計測結果から見ていこう。
Beyond the sea (128kbps)
上図は、緑色の実線がWAVE、オレンジ色の実線がAAC/128kbpsの特性を示している。目立つのは、AAC/128kbpsが16kHz以上で顕著に落ち込んでいるということ。
CDには22kHzまでの信号が入っているが、AAC/128kbpsでは実質16kHz以上のオーディオ信号はほとんど削除されているわけだ。これを補うように12k~16kHzが強くなっているのも目につく。また、全体のグラフ形状もWAVEとは大きく異なり、これが音質に大きく関わるのではないかという予測ができる。
Beyond the sea (256kbps)
こちらの図は緑色の実線がWAVE、オレンジ色の実線がAAC/256kbpsの特性となる。注目したいのは、先ほどのAAC/128kbps比べたときのような16kHz以上の落ち込みが発生していないということ。AAC/256kbpsの特性は、ほぼ緑色のWAVEと相似形になっており、多少山の頂点が抑えられた程度の差しか見受けられない。この微妙な差異は恐らくダイナミックレンジの差であろう。圧縮オーディオはダイナミックレンジも多少圧縮するからだ。
J-Popのソースでは、差異は若干縮まる
次に宇多田ヒカルのFor Youの計測結果を見ていく。
For You (128kbps)
128kbps AACでは、こちらも16kHz以上で落ち込みが発生している。しかし、J-Pop特有の高い音圧のせいであろうか、Beyond the seaほど明確な差として現れない。そのほかの周波数のグラフ形状もBeyond the seaほど顕著ではない。総じて前曲よりフォーマットごとの差は少ないと言えるであろう。
For You (256kbps)
256kbpsでも、だいたい18kHzくらいから上が多少落ち込んでいるが、やはり顕著ではない。むしろ60Hz付近の山が多少低くなっているのが目立つ。256kbpsでは、総じてWAVEと近い形状になるのはBeyond the seaと同様だ。
計測から分かったポイントは2点
以上の検証により、分かったことは次のとおり。これを踏まえて、後編ではもう数曲加えた試聴に移ろう。なおチェロ独奏に関しては、後述する理由から計測結果を掲載していない。
- 128kbpsエンコードは16kHz以上の高域が削られてしまう
- 256kbpsエンコードは多少ダイナミックレンジの差が見られるが128kbpsエンコードに比べてずっとWAVEのオリジナルファイルに近い
*後編に続く