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アキバ・キーマンインタビュー 第10回

【アキバ・キーマンインタビューNo.10】

秋葉原駅前にできた31階建ての富士ソフト秋葉原ビル、映像事業部長・石田氏に聞く!

2007年05月01日 18時00分更新

文● 大森 徹哉

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キーワードは“AKIBAから世界へ”

――実際にこちらで試写会をするようなこともありますか?
【石田】 映画業界からはすでにいくつか話をいただいています。スカパーさんとかWOWOWさんのキャンペーンもこれまで六本木などでやっていたんですが、よく考えると六本木でやる理由なんてないですよね。アキバにこれが出来たからには、アキバでやったほうが良いと思いますよ。電気屋さんも周りに多くて、「チューナー買ってください」とか一緒にできますから。アキバという地の利をうまく使っていきたいですね。

――ほかにはどういったイベントが考えられますか?
【石田】 いくつかお話もいただいていますが、例えばゲームの大会ですとか。DLPに全部ゲームを直結しますので、350インチのスクリーンと5.1CHのサラウンドというTHXの環境で対戦型ゲームの世界マッチなどをやったらいい。

――ものすごく贅沢なイベントですね(笑)
【石田】 決勝戦はそういう環境が与えられる、なんてことになったらいいじゃないですか。せっかくこういう器を作ったので、あとはそれをどう使うかは、皆さんの手に委ねたいんですよね。それを放送業界が使うのかゲームの業界が使うのか、はたまた映画業界が使うのか、それは自由ですよ。ただ、アキバで情報発信をするというところで何かやりましょうよと。

――あとは、例えばメーカーが商品を発表するみたいなことに使われることも考えられますか?

【石田】 そうであれば最高ですよね。DLPが2つありますので、会議の進行などでも、メインの大きいDLPと小さいDLPプロジェクターとの併用で、今までに無いスムースな進行ができます。映像は10階にあるスタジオからも全部送ることができるんです。1階のロビーにも映像を送ったり、また1階の映像を上の階に上げることもできます。ですから全館あげてのイベントを行うことも可能です。映像・音声に関しては今までにないような仕組みを作っております。それをインターネットにライブで流したり、VOD(Video On Demand)の素材に変えたり、もしくはライブでテレビ局に入れればそのまま放送になります。そういった全体の仕組みが新しいんです。単品じゃなくて全体というところがミソですね。これだけ集約したものは世界的に見てもほかにありませんよ。

――何かモデルがあったのですか?
【石田】 ありませんよ、勝手に作ったんですから(笑)。ただ、ハリウッドメジャーの仕事もしていましたので、世界的なメジャースタジオがどういうファンクションを持っているか分かっていましたし、日本のテレビ局がどんなものを持っているかも知ってました。日本のテレビ局さんも良い物を沢山持っていますけど、目的が違いますからね。

――目的が違うというのは?
【石田】 ハリウッドは世界一じゃないですか。日本のテレビ局さんは、やはり日本発日本行きですから。そうすると目的は違ってきますよね。

――富士ソフトさんは世界を視野に考えていらっしゃるのですか?

【石田】 そうですね。どうせやるなら映像コンテンツの世界も、それからウチの得意としている本業のITの組み込み系とか、プログラミングの分野も、世界へは非常に近い位置にいます。

――世界に発信するということ?
【石田】 そうです。“AKIBAから世界へ”がキーワードですから。


どうせアキバに作るなら、ちゃんとしたものを作りたい

――秋葉原で具体的にこういう形でビルをやろうという話はいつごろからあったのですか?

【石田】 5年くらい前からです。着工してからは2年半です。どうせアキバに作るんですから、ちゃんとしたものを作りたいなと思って。民放さんがこの設備を作られたらたぶん、倍くらいの値段がかかるでしょうし、NHKさんが作られたら3~5倍はかかると思います。富士ソフトはITが本業ですが、設備にはその智恵が活かされています。

――金額的にはいくらかかったのですか?
【石田】 工事費、設備等含めて約24億円です。そのうち半分が設備費。高額だと会社からは怒られていますが、全体から見ると非常にリーズナブルなんですよ。

――秋葉原という場所にはもともとこだわりがあったのですか?
【石田】 秋葉原というより、駅の近くということにこだわりがありました。ここはもともとJRの土地だったのですが、ウチで落札しまして。どういう建物にするかというのはそのあと徐々に決めていったんですよ。それに、当時は秋葉原がここまでになるとは思っていなかったんです。ちょうど2000年の東京都の都市計画があって、「アキバをもっと活性化してITの街にしよう」というところで産官学連携がありまして、土地を取得できたのです。

――最近ではメイドカフェなどもオープンしていますが、アキバにはどのようなイメージをお持ちですか?
【石田】 やはりアキバといえば日本の情報を発信する場ですよね。ハリウッドの連中に聞いてもアキバを知っている人は多い。自分達が「映画はハリウッド」というように「IT、映像系のことはアキバ」だと考えているんですよ。今後は「アキバ=富士ソフト」だと認知していただきたいですね。

――それは一般の人たちにとってもですか?

【石田】 そうです。今まで富士ソフトは、非常に目立たない仕事をする会社でしたが、これからは直接目に触れるような事もしていきたいと思っています。ここをひとつのファシリティとして捉えると、昔の単なる設備投資と違って、いかに有効に活用するかということが経営側にとってものすごく重要な事項になってきます。今回の映像もそうですが、設備投資はお金さえあればいくらでもできます。しかしそれを有効に活かすかどうかは経営の手腕。スタジオは作りましたが、これをいかに稼動して付加価値の高いものにしていくかはこれからです。やはり良いテナントさんに入っていただくというのは、社員のモチベーションを上げたり、利便性を高めて生産効率を高める、ビルの価値を高めるという事につながるので大事なのです。(次ページへ続く)

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