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Chizzy Dilleyのセカンドライフレポート

日本発の歓楽街“KABUKI”を歩く

2007年04月18日 10時00分更新

文● Chizzy Dilley (インワールドリポーター)

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オーナーのNOMURAさん

オーナーのNOMURAさん

 最近では、セカンドライフへの企業参入が騒がれている。個人であっても島(SIM)をまるごと購入し、オーナーとして仕掛けを作るといった試みは可能だ。ただし、SIMをまるごと購入するだけでも約20万円、維持費として毎月3万6000円程度をリンデンラボに支払わなければならないが。

 セカンドライフでは、SIMごとにサーバーが割り当てられるため、維持費はその管理費と考えれば納得がいく。でもただ単に「セカンドライフを楽しみたい」という目的で、この金額を支払う個人はほとんどいないと思う。一体どんな目的でSIMを運営しているのか、不思議に思う方もいるだろう。“KABUKI”のオーナーであるNOMURA Millandさんに話をお聞きした。


――KABUKI建設の動機について

NOMURA 現状の日本人SIMに魅力を感じなかったから。人間を魅了するものは、本来清濁合わせた複雑なものであるのに、(日本人SIMには)その清い部分のしかも“ほんの一部しか”まだ存在していないと思った。何が足りないかと言われればすべて足りなく見えた。

――アダルトコンテンツを含んだ理由は?

NOMURA 本当の楽しさや刺激というのは、少し後ろめたいというか、背徳的なものにあるのではないかと思う。なぜ、それがいまの日本人SIMで表現されてないか不思議だった。KABUKIは、ある意味、欲望に忠実に素直に表現した街だ。この世界を自分は“仮想世界”と捉えている。“願望”や“逃避”だとかリアルでは実現できないことが可能な世界であり、SL(=セカンドライフ)ではSLなりの楽しさというのがあって、それを重視しなければ面白みがない。加えて、KABUKIの場合は、アダルトコンテンツは収益を上げるためにやっているというよりは、目標とする“夜の街”を実現するために必要だからやっているというのもある

KYOKOさんのラウンジ

kyokoさんのラウンジ。店内には、ママ自身の音楽が流れています(kyokoさんはリアルで、プラスティックソウルバンドのボーカル)。しっとり系あり、ノリ系ありで、フロアではお客さんたちがkyokoさんの曲に合わせて踊っています

――アダルト以外のKABUKIのチャレンジは何か

NOMURA 日本初はいろいろある。例えば、KABUKIには現在12の海外店舗があるが、これは日本人店舗の2倍だ。SLにはSL特有のクールなこととか、面白いことがあって、それはやはりまだ海外に多い。それを日本人に伝えたい。清濁で言えば、癒し系のラウンジをオープンさせるなど“清”にも力を注いでいる。このラウンジの“ママ”は、リアルではシンガー。ラウンジには本人が歌う曲が流れている。セカンドライフ内のコンテンツと音楽の融合性は非常に高いと感じている。SL内の音楽ライブというのはすごく魅力的だ。

――リアルライフのビジネスとして考えているのか

NOMURA もともとは、経済紙でセカンドライフのことを知ってビジネス寄りで始めた。しかし、実際に中に入って、実態を知るとすぐにそんな考えはなくなってしまった。モノを売るといったことは別だが、ビジネスを本格的に始める状況にはまだないと思っている。このSIMの収益もほぼゼロ。むしろ全額赤字だが、そうでないとやりたいことができないと感じている

――現況の企業SIMをどう見ている?

NOMURA ほとんどの人は、こういった企業のSIMを一度訪れて終わるか、あるいは一度も行かない。一個一個のオブジェとしては優秀なものがたくさんあるし、とてもきれいなSIMもあるが、そこに“人の気”が感じないことが非常に多い。ただきれいなだけで、芸術作品や鑑賞作品として終わってしまうのでは意味はない。これは企業だけではなく“場“を提供する側みんなが共通して持っている課題だ。自分自身は、個人的な趣味ではなく、いいものを作っていかに多くの人に見せるか、そして活用してもらうかにチャレンジしようと思っている。例えば、日産などの一部の企業SIMも以前はリアルに存在する自動車を作って配っていたけれど、今では空飛ぶ車などを作っている。これは、リアルと同じままでは、受け入れられないということに企業も気付いてきている結果ではないか

――人に活用してもらう土地にするにはどうしたらいい?

NOMURA いわゆる“クリエイター”とモノをつくらないユーザーの間には、まだ温度差があって、高機能なモノを作ったから人がすぐに集まるわけではない。自分もそうだが、もっと単純に「わぁすごい」とか「きれい」とか判断することが多い。頭で考えるのではなくて心で感じるということ。クリエイターのエゴに陥らないようにユーザー(利用する側)の視点を持ち続けることが必要だと思う。あとは何につけてもバランスを考えることが常に重要であり、そこが難しいと感じている

――企業、個人ともに土地を購入して何かをしかけたいと考える人は増えてくると思うが、企画を考える上で何が必要だと思うか?

NOMURA 質のいいクリエイターは絶対不可欠。だが個性的なクリエイターたちをどう指揮していくかも重要になってくると思う。トータルでプロデュースするなら、SIMディレクター的な役割をする人物が必要だ。自分について言えば、クリエイターが作ったものに血を通わせ躍動させ、生かすのが役割だ。

インタビュー中

インタビューしながら、NOMURAさんにカクテルを作ってもらいました

――今後の展開は?

NOMURA まずは今のコンセプトのまま進化、拡大させ独自のブランドをしっかりと確立したいと思っている。セカンドライフの進化とともに自分達も進化して色々なことにチャレンジしていきたい。

Chizzy Dilleyのプロフィール

表の職業はインワールドリポーター。裏の職業はミニスカポリス(日本地区の夜回り)と占い師。現在の住居は大人のエンターテイメントシティー“KABUKI”。早朝はSLINGHOKURIKUの温泉とIKEBUKUROの足湯、昼はAKIBAのカフェと海外のバーに出没。夜中はKABUKIで占い師。現在秘密計画を進行中……。


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