NECおよびセキュリティサービスベンダーのラックは、大量のデータを解析するデータマイニングを用いたセキュリティ監視技術を開発し、実証実験の成功を発表した。
データマイニング技術をセキュリティ分野に応用
企業のシステムは外部からだけでなく、内部からもさまざまな脅威にさらされている。これらの脅威は年々高度化しており、既存の対策だけでは十分でなかったり、あるいは異常を発見できてもすでに手遅れということも多い。
NECとセキュリティサービスベンダーのラックは、大量のデータからパターンや相関性を抽出する「データマイニング」技術を用いて、セキュリティ監視サービスを行なう「セキュリティ・マイニング」技術を開発した。これはNECのデータマイニング技術と、ラックのセキュリティに関するノウハウを組み合わせたものだ。
SQLインジェクションの予兆を検出する“ChangeFinder”
データベースを用いた動的なWebアプリケーションシステムに対する外部からの攻撃として、データ入力時にデータベースを操作する言語(SQL)を混入させる「SQLインジェクション」と呼ばれるものがある。これは従来のIDS(侵入検知システム)では検出が困難と言われている。
NECデータマイニング技術センター長の山西健司氏によれば、NECは用途に応じたいくつかのデータマイニングエンジンを持っており、その中から時系列データの急激な変化を検知する“ChangeFinder”を用いたSQLインジェクション攻撃の予兆検出を試みたという。実際に攻撃が行なわれた企業のWebサーバのログファイルを用いて検証を行なったところ、実際に攻撃が成功してデータの漏出が起きる22時間前に攻撃の開始(サーバに対する試験的なアクセス)を検知できたという。実際に攻撃の行なわれた3日間のログファイルは344万行に及ぶが、処理に要した時間は2分程度(Pentium 4搭載機)で済んだそうだ。
膨大なログを効率良く絞り込む“AccessTracer”
内部の人間による犯罪行為の検出は、ログを解析することで行なわれているが、きわめて膨大で難解なログの解析は手間と時間がかかるため、実際に犯罪が行なわれた時に速やかに検出するのは困難であった。
山西氏は内部犯罪のログ分析に、異常行動の検出を行なう“AccessTracer”を用いたことを説明した。AccessTracerはユーザーの行動履歴からパターンや「クセ」を学習し、いつもと違う行動を検出すると高い「異常スコア」として報告するものだ。こちらについても、実際に内部犯罪が発生した事例でWindowsのイベントログを分析したところ、100%の精度ですべての不正行為を確認できたという。1万1000行のログを処理するのに要した時間は、7秒(Pentium 4搭載機)程度とこちらもきわめて短時間である。
ラックの取締役SNS事業本部長の西本逸郎氏は、現在のWebサイトに対する攻撃の傾向を「3つのS」、すなわち“Shifty(狡猾な)”、“Stealth(ステルス、見つけにくい)”、“Sniper(スナイパー、特定のサイトをターゲット)”と表現する。そしてWebアプリケーションの脆弱性を完全にゼロにすることはできないうえに、大規模なWebサイトの複雑度はもう管理限界に達していると指摘する。このような状況に対して、全体を鳥瞰するためのデータマイニング技術の活用が有効であると訴えた。
今回発表された技術の製品化やサービスとしての提供日程は未定だが、NECのインターネットシステム研究所長の山之内徹氏は「1年後をめざして製品化を実現したい」と語った。
- ■関連サイト
- 日本電気株式会社
- http://www.nec.co.jp/
- 株式会社ラック
- http://www.lac.co.jp/