就職活動を控える学生・若手ITエンジニア必見の人事担当者インタビューをお届け!
“高度IT人材”獲得について企業へ取り組みを尋ねると「日本が求めているこれからのITエンジニア像」が見えてくる
2021年07月08日 20時00分更新
富士通株式会社:主体性を持って周囲へ良い影響を与えられる人材を積極的に採用
IT企業からDX企業へと変革しようとしている富士通株式会社。事業の変革などについて積極的に社外へ広報している影響もあるからか、最近では以前なら富士通に興味が低かったような人材の入社も増えてきているのだという。
富士通が求めるのは、AIエンジニアやサイバーセキュリティエンジニア、データサイエンティストをはじめとする専門性の高い人材。しかし、そもそも日本はもちろん世界でも対象となるような人材の数は限られており、他社との取り合いも生じているとのことだ。
中途採用で求めるのは、スキルと知識、それにブラスして経験。その経験を富士通で再現できるかを重視する。担当する原田氏によると、以前は、富士通のカルチャーに合うかどうかを見ていたが、近年では富士通のカルチャーに合うか合わないかにこだわらず「仮に現状の富士通に合わなくても、社内へ良い影響をもたらすような人物か、その方が入社されることで新しい何かが生まれそうかという変化を見るように視点が変わった」(原田氏)のだそうだ。
いっぽう新卒採用は中途採用と違って、業務としての経験や大規模プロジェクトへの参加もないので、その卵として資質を判断する。そのひとつとして挙げられるのが、社会人も含めたコンテストなどの場における経験。コンテストのような力を発揮する場があると評価しやすく、実際、良い成果を修めた人には、新卒一律の給与体系ではなく、個別の給与体系を提示することもあるという。
新卒採用における判断基準として見るのは「伸びしろ」だと言う。担当の渡邊氏は「まず自分が主体にあり、富士通に入るということが、どういうことか分かっている人。富士通に入れば、自分では持ち得ない資産を使って何かコトを起こせる。富士通を使って自分だったらどんなことができるか、自分のテクニカルな部分とフィットしている内容を理解できている人。そういう人は、富士通に入っても、主体的に物事を進めていけるし、そういう人に伸びしろを感じる」と語った。
株式会社日立製作所:世界中の社会課題を解決したい、そのような志を持った方と是非一緒に仕事をしたい
株式会社日立製作所がここ十年で強化しているのは、顧客とともにグローバルで起きる社会課題を発見し、その解決を行う社会イノベーション事業。その中核として位置付けているものが、日立製作所のアセットである「モノづくり技術」と「デジタル技術」を組み合わせ、サービス化することでマネタイズするビジネスモデルである。
そこに求められるのは「ソリューションを考えられる人財」。その定義を採用担当の若月氏に尋ねると「ビジネスに繋がるサービスを作ることができること。それはビジネスの初めから終わりまでをひとつのストーリーに書きあげ、さらに他者を巻き込むことができる人財」を指すのだそうだ。
かつてのビジネスは製品やサービスの仕様が決まっていたため、SEはそこにコミットメントすれば良かった。しかしいまは違う。ソリューションの種は顧客のそば(近く・現場)にあるため、SEもフロントに立って顧客と会話を繰り返すことで、顕在化されていない課題を引き出して、提案していかなければならない。
そのために必要なものはコミュニケーション力。それには発想力や聞き出す力、言語力といった「正しく情報を伝える能力」「相手がそれを認識できたかを確認できる能力」「相手が自分に対して何を言いたいのかを認識できる能力」が必要だと若月氏は語る。
また日立製作所ではグローバルでさらなる成長をする上で、全社員に対して「専門性」「リベラルアーツ」「ダイバーシティ(多様性)を受け入れるマインド」を求めるアビリティとして定義している。特にグローバルでのビジネス環境で新しい価値を⽣み出していくためには、バックグラウンドの異なる多様な価値観を持った人財や顧客との「インクルージョン(包摂性)」が一連の価値創造の根幹をなすことから、ダイバーシティを受け入れるマインドは不可欠であるという。
採用活動においては、スキルとともに志向性を重視している。志向性というのは言い換えると志望動機。日立製作所で何をしたいのか、そのマインドを重要視するという。スキルはあくまでも“道具”の使い方であり、やるべきことがあるときの手段。後から身につけられると言う。実際、ITのビジネスドメインに配属される新卒社員の場合、入社後3ヵ月間はプログラミング教育をし、さらに3ヵ月間、事業部ごとに研修。その後Off-JT研修で身につけたスキルの使い方を、職場の指導員によってOJTで学んでいくプロセスがあるそうだ。
日立製作所のような規模が大きい組織で仕事をする魅力は、社会に対してインパクトのある成果を出すチャンスがあること。「当社には幅広いビジネスドメインがあり、それぞれのビジネスで直面する社会課題の解決を通して研かれた、知識とスキルを持った人財がたくさん活躍している。このような多様な人財を組織力としてひとつのベクトルに束ねることで、社会に対して大きなインパクトを与える仕事をしている。日立製作所で世界中の社会課題を解決したい、そのような志を持った方と是非一緒に仕事をしたい」(若月氏)というメッセージが語られた。
株式会社サイバーエージェント:技術への好奇心が強い“素直でいいやつ”がマッチする企業
採用のミスマッチをゼロにしたいと考えるサイバーエージェント。エンジニア職として新卒採用する人数のうち半数は、サーバーのバックエンドエンジニアだという。それはゲーム・広告・メディアサービスなど、さまざまな事業を手がけているなかでも、バックエンドエンジニアはどの事業にも必要な人材であることが理由だそうだ。加えて機械学習・データサイエンティストの領域でも年々採用人数を増やしており、2018年度卒に比べて2020年度卒では2倍の人数を採用している実績があるとのこと。
選考過程について新卒エンジニア採用を担当する峰岸氏に尋ねると、選考においては全5回の面接を実施。1回目の面接では現場のエンジニアがスキルをジャッジし、技術的な好奇心を確認。残り4回の面接で、いまの技術力とこれからの伸びしろを総合的に判断しているとの回答。またインターンシップを「適切なスキルジャッジできる場面」(峰岸氏)だと考えており、新卒採用者の40~60パーセントはインターンシップ経験者だという。
選考方法については、現状有しているスキルだけでなく伸びしろを大事にするため、2018年度卒まで実施していたコーディングテストを、以降は取りやめた。コーディングテストはAPIの実装が中心であったため、ゲームクライアントエンジニアや機械学習エンジニア、データサイエンティストにとって不利で、貴重な人材を採用できない機会損失の可能性があると考えたためだ。
欲しい人材は、シンプルに言うと「素直でいいやつ」。技術への好奇心が強く、仕事を任せられる素養があることを重視。また技術・組織・チーム、どの分野でもよいので、周囲をリードできる人。過去の実績から、そういう人は技術が伸びており、伸びしろが担保できるからだと言う。中途採用は新卒ほど伸びしろを重要視しないが、カルチャーへのマッチングは大事にしている。スキルがあってもカルチャーに合わなければ、なかなか採用にはつながらないのだそうだ。
サイバーエージェントの強みを尋ねると、新卒採用を担当する峰岸氏は「事業領域が多岐に渡っていて技術的にもさまざまなチャレンジができること。挑戦・裁量権も高い」と語る。
採用の幅を大卒以外にも広げており、専門学校・高専はもちろん、今年は高校生も採用した実績があるとのこと。また今後さらに採用を拡大していきたい人材として、主にSIerなどを志望するような理系研究室の学生に、サイバーエージェントで働くことの魅力を知ってほしいとのこと。そうした学生さんへこれまで以上に企業としての認知を高めることで、優秀な人材獲得に繋げていきたいと峰岸氏は語った。
株式会社ディー・エヌ・エー:高いスキルを持つエンジニアにとって成長環境として魅力的な職場
DeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)がエンジニア職として求めている人材は、「技術・モノづくりが好き」で「自走しつつ協働できる」素養を持っているかどうか。この2つを選考では特に厳しく確認している。
上記の観点について新卒採用担当の村上氏に尋ねると、まず「技術・モノづくりが好き」という点についていえば、現在のエンジニア職採用においてはプログラミング未経験者を採用していないのだという。その理由として、インターネットとPCさえあれば無料でプログラミングができる昨今において、技術やモノづくりが好きなエンジニア志望者なのに、プログラミング未経験というのは「矛盾する」という考えがあるからだそう。面接では、自分がこれまでに作った成果物について、「それをどう作った」「どうして作った」「誰かに使ってもらったか」「フィードバックをもらったか」「フィードバックをどう反映したか」など深掘りすることで、思考の深さや、モノづくりへの関心具合を確認するとのこと。
「自走しつつ協調できること」という観点を重視する理由については、DeNAという企業が持つカルチャーが大きく関わっている。DeNAは球型の組織であり、新卒であっても経験者であっても、DeNAという球の表面積を担い、自らの責任を果たすことが求められるためだという。あまりに保守的な志向を持つ人や、変化への順応が苦手な人だと、たとえ能力が高くても会社とマッチングしない可能性が高いことから、採用にはつながらない傾向があると言う。
「DeNAはテックカンパニーであり、技術的なレベルは日本でもかなり高く、エンジニアが技術的に成長しやすい環境」だと、DeNAで働く魅力を村上氏は語る。また複数の事業領域において、新規事業である「0から1にするフェーズ」から、スケールする段階の「10から100にするフェーズ」まで、さまざまな段階を経験できることもポイント。DeNAで働くエンジニアは、こうした経験を踏んで、プロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャー、そして、セキュリティやインフラなどのスペシャリストなどそれぞれのキャリアを築いていくのだそうだ。
加えてDeNAで働く魅力としては、人材の流動性や多様性を歓迎していることも挙げられるとのこと。実際、入社後エンジニアとしての能力を高め、そこから転職や起業の道を歩む人も多いのだそう。そうした起業意欲を企業として受け止めるべく、社内起業を支援するような制度も持っているとのことだ(編集部注:詳細はデライト・ベンチャーズを参照されたい)。