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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第394回

米国AI依存の危うさ Fable禁輸で“ソブリンAI”注目集める

2026年06月30日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 米政府によるAIの最新モデルの囲い込みが始まった。

 日本時間2026年6月13日の朝、Claudeの新しいモデルFable 5が日本でも使えるようになっていたため、筆者も、その実力を試したいと思い、いくつかの指示を入力した。Fable 5は、現時点で「最強」とされるMythos 5を一般公開用に機能を制限し、サイバー攻撃などの用途に使えないようセキュリティを強化したモデルとされる。

 しかし、昼ごろになって、米政府がこのFableについて、海外からのアクセスを禁止したという報道が広まりはじめた。Claudeの開発元であるアンスロピック社の声明を確認すると、米国の東部時間12日午後5時21分に米政府から、Fableを輸出禁止措置の対象にしたとの通知を受け取ったと書いてある。

 この通知で米政府はアンスロピックに対して、米国内と国外のいずれであっても米国人以外によるFableへのアクセスを遮断するよう求める内容だった。米国のアンスロピックで働く外国人の従業員も、Fableへのアクセスを遮断したという。

 この通知がアンスロピックに届いた結果、日本では13日土曜の午前中には、Fableにアクセスできなくなった。

 AIの最新モデルの「禁輸措置」について米政府は、セキュリティが原因だとしている。そうであっても、特定の国の事情や思惑により、最新モデルへのアクセスが制限される事態は、世界中のビジネスや開発の現場に少なくない影響を及ぼすだろう。

Fable 5の「ぜい弱性」

 今回の米政府の判断の引き金になったとみられるのは、Fableのぜい弱性に関する情報だ。複数の報道によると、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOがスコット・ベッセント財務長官に対し、Fableの安全制御を迂回できる手法があると伝えたことがきっかけだと報じられている。

 Fableは、Mythosをベースに開発されたとされるモデルだ。Mythosについては、短期間のうちに既存のOSやブラウザのぜい弱性を大量に発見したとされ、優秀すぎることが原因で、特定の企業にのみ限定公開されている。Fableは、こうしたサイバー攻撃にも使えるAIの機能を無効化し、安全性を確保したとして、アンスロピックが6月9日に一般公開していた。

 しかし、アマゾン側がFableの機能制限を回避して、サイバー攻撃などにも使うことができると伝えたことで、米政府はFableの禁輸に踏み切ったという。これに対して、アンスロピックは声明の中で、「限定的なもので、特定の一事例においてのみMythosのサイバーセキュリティ能力を引き出す可能性がある、狭い手法だ」と述べ、政府の禁輸措置に反論している。

アリババからClaudeへの「攻撃」

 今回のFableの禁輸措置の引き金になったとみられる出来事は、もう一つある。

 Fableへのアクセスが制限される2日前、アンスロピックは米国上院の銀行住宅都市委員会に対して、中国のアリババを中心とするグループが、Claudeの能力を不正に引き出そうとしたと報告している。

 6月24日のCNBCによれば、アリババや、アリババと関係があるとみられる約2万5000件の不正アカウントが4月22日から6月5日にかけて、Claudeのモデルに約2,880万回アクセスしたとされる。

 この手法は「蒸留」と呼ばれ、Claudeの最新モデルのような強力なモデルから、プロンプト(指示)と回答のデータを収集し、そのデータを能力や規模で劣るモデルに学習させるものだ。アリババは最近、AIのモデルQwenで米国のAI大手を激しく追い上げている存在だ。Claudeに対して「蒸留」を仕掛ける動機もある。

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