メタバースで、3メガバンクに大きな動きがあった。
みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、富士通など10社が2023年2月27日、メタバース「リュウグウコク(仮)」の構築を目指すことで合意したと発表した。
リュウグウコク計画の中心にあるのは考え方の1つは「ゲーミフィケーション」(ゲーム化)という言葉だ。
「ゆるやかなオンライン異世界ロールプレイングゲームの要素」(プレスリリース)を取り込むという。
今回の合意に加わった10社は、ほとんどが日本を代表するような企業ばかりだ。
大がかりなプラットフォームで、どんな仮想世界の実現を目指すのだろうか。
キーワードは「安心・安全」
リュウグウコクのプレスリリースから、ある程度イメージは浮かんでくる。リュウグウコクが目指すのは、突き詰めると、仮想空間上の決済インフラではないか。
まず、メタバース上では次のような機能の実現を目指すという。
●情報発信
●マーケティング
●働き方改革
●消費者のEX(エクスペリエンス・トランスフォーメーション)
おそらく一般ユーザーがリュウグウコクを歩くとさまざまな企業が情報発信をし、商品の広告(マーケティング)が目に入ってくる。
ユーザーはアパレルの店に行き、アバターがジャケットを試着してメタバース内を歩き、気に入った場合はジャケットを購入する。購入したジャケットは宅配便で届けられる。これがおそらく「消費者のEX」なのだろう。
働き方改革は、メタバース上でのオンラインミーティングやウェビナーの開催などが考えられる。
企業連合の10社中6社が銀行、損保、クレジットカードの会社であるためか、強調しているのは「安心安全」な決済だ。
メタバースを現実のビジネスインフラとして機能させるために、安心安全な決済基盤が必要であるのは疑いがない。
ただ、プレスリリースに記載された内容はメタバースに出かけなくても、インターネット上ですでに実現されている機能が多いのも事実だろう。
キーワードはゲーム化
むしろ注目すべきなのは「ゲーミフィケーション」というキーワードではないか。
たとえばExcelを使ってプロジェクトの資金管理をする仕事には時間と忍耐がいる。
同じように、マインクラフトで強力な装備を手に入れるためダイヤモンドを採掘するのにも時間と忍耐が求められる。
前者は退屈でつまらない仕事かもしれないが、後者ならゲームクリアに必要なミッションとして楽しめる。
仕事や勉強にゲームの要素を取り入れていくのがゲーミフィケーションの考え方だ。
異世界RPG風のメタバース・リュウグウコクで、ゲームのような日常を過ごすことができるのなら、楽しそうではある。
ゲームのクオリティが成否を分ける?
いまのところリュウグウコクの具体的にどのようなゲーム化が図られるのかは、公表されていない。
リュウグウコクの機能の1つに「RPGエディター」があり、企業などがゲームイベントを作成できるという。
ゲームが実装されるのであれば、その内容が、リュウグウコクの成否にもつながるのではないだろうか。
メタバースは現時点でビジネス界の熱い注目を集めてはいるが、一般消費者にとって気軽に利用できるプラットフォームとしては認知されていない。
しかしゲームそのものが面白いのであれば、一部のユーザーやゲーマーたちは自然に集まってくる。
異世界で仲間たちとドラゴンと戦ったついでに、ショップで残り少なくなった台所の洗剤を注文し、行政手続きも済ませる──。
そんな日常がコンセプトの中には含まれているように思われるが、実現にはまだ時間が必要であるようにも思える。
内向きな参加企業
今回の合意に参加した企業のリストを見て、少しすっきりしない気分が残る。

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