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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第80回

ハンコをなくす手続きにもハンコが必要……都知事選公約にもなった「ハンコレス」の難しさ

2020年06月22日 09時00分更新

文● 小島寛明

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画像はイメージ

 東京都のトップを選ぶ東京都知事選が6月18日に始まった。これまでのところ優勢とされる現職の小池百合子氏は、公約としてハンコレスなど「4つのレス」を掲げている。

 ペーパーレス、ハンコレス、キャッシュレス、タッチレスの4つだが、今回はペーパーレスとハンコレスについて考えてみたい。

 ペーパーレスとハンコレスはいずれもデジタル化と関係が深く、いわば裏表の関係にあたる。

 新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、オフィスに出社する人を減らさざるを得ない状況が生じ、2つのレスについて真剣に議論される空気は醸成されたのだろう。

 しかし、2つのレスを率先して進めるべき大企業がハンコを削減するには、いくつものハードルが浮上している。

 その1つが、取引先の企業との関係だ。

●下請法がハンコレスのハードルに?

 経済産業省が開いているさまざまな会議のひとつに、産業構造審議会がある。産業政策の根幹部分について話し合う場であるだけに、たくさんある会議の中でも重要度は高い。

 6月17日に開かれた産業構造審議会で委員の1人が、下請法の運用に問題があるとする文書を提出している。

 提出者は、NTTデータの子会社ネットイヤーグループの社長石黒不二代氏だ。

 下請法は、大きな会社が、小さな会社に対して仕事を発注する際に、代金を引き下げたり、支払いを遅らせたりといった、不当な取り扱いを防ぐ目的がある。

 たとえば、資本金の額が大きいIT企業が、小さなウェブ制作会社に仕事の一部を外注する取引も下請法の対象となる。

 下請法は、仕事を発注する企業に対して、さまざまな義務を課しているが、その1つに書面の交付がある。

 口約束で仕事を発注した場合、発注者側の都合で下請企業が代金を減額されたり、金額は変わらないのに仕事が増えたりといったトラブルが起きやすい。

 このため、下請けの会社に対して、発注者側が無理を押し付けることがないよう、同法は仕事の内容や代金、納期などについて事前に合意し、書面を渡すことを求めている。

●書面で合意できないときはどうすれば?

 しかし、産業構造審議会に提出された書面では次のように指摘されている。

 「電子取引をするためには、『電子取引をするための書面による合意』が予め必要です。そのため、今のような緊急時に、すぐにメールでの取引をすることはできません。下請法は、書面合意ができないから電子取引をする、ということは全く想定していません」

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