熟練者並みの精度88%を達成、熟練者不足に悩む水道インフラ探査の平準化へ
地面に置くだけで「給水管の漏水位置」を自動特定 NTTが光ファイバセンシング×AIで世界初実証
2026年10月21日 10時00分更新
全国のさまざまなエリアで水道設備の老朽化が進む中で、重要性を増しているのが「漏水探査」だ。しかし、その作業は熟練技術者のスキルに頼る部分が大きく、地方自治体を中心に「誰でも扱える技術」の登場が待ち望まれている。
NTTは、2026年10月21日、光ファイバセンシングを活用した非破壊での「給水管漏水位置の特定」に世界で初めて成功したと発表した。給水管直上の地上で漏水に伴う微弱な振動を測定。そのデータをAI解析することで、“熟練者並み”である88%の精度と約15分という短時間での自動特定を実現している。
NTTアクセスサービスシステム研究所の鬼頭千尋氏は、「誰でも簡単・正確に漏水探査が可能な、世界初のスマートインフラ技術の第一歩」だと語った。
漏水の9割が給水管で発生 課題は“アナログな探査技術”の継承
今回の実証実験は「福岡市実証実験フルサポート事業」に採択され、福岡市管工事協同組合の協力のもと、福岡市内のフィールド環境で実施された。
現在、福岡市における上水道の漏水の9割が「給水管」で発生している。給水管とは、道路に埋設されている配水管から分岐して各家庭や建物へ水を供給する水道設備のことだ。冒頭で触れたように老朽化が進行しており、漏水探査の重要性が一段と増しているという。
「例えば昨年、箱根町で大規模な断水が発生したのも給水管の漏水が原因だった。気温の低下に伴い、老朽化した給水管が同時多発的に破損し、貯水池の水位低下を招いていた」(鬼頭氏)
一方で、漏水探査の現場は、熟練者の技術や経験に大きく依存しているのが実情だ。漏水が疑われる場所の地面に「音調棒」と呼ばれる専門器具を当てて音を聞き、漏水位置を判断するアナログな手法が主流であり、この技術を習得するには3~5年の経験が必要だとされる。
今回の光ファイバセンシングとAIを組み合わせた位置特定の自動化は、この技術継承という課題の解消に寄与する技術となる。加えて、漏水箇所を正確に特定できるため、私有地内での「掘削箇所を間違えられない」という作業者のプレッシャーを和らげることにもつながるという。
微弱な振動の分布測定で漏水箇所を特定 持続的なインフラの維持・管理を実現
実証実験では、地下30cmから120cmに埋設された給水管直上の地上に、NTTが設計した板状の光ファイバデバイスを複数設置。光ファイバセンシングで地中の微弱な振動を測定した。そして、デバイス間のデータ類似度を解析することで、周囲とは異なる振動を示す漏水発生箇所を特定するというアプローチだ。
さらに、周囲に雑音がある環境でも漏水箇所をピンポイントで自動特定するAIアルゴリズムを構築。さまざまな条件下でフィールドデータの収集・解析を重ねた結果、水平誤差75cm以内で精度88%という実用水準に到達し、技術の原理実証に成功した。
この技術の特徴は、従来のアナログ手法のような高度なスキルが不要になる点だ。今回の実証では、特定精度だけではなく、作業時間も約15分と従来手法(15分~30分)に匹敵する成果が得られている。
一方で今後の課題となるのはコストだという。「光ファイバセンシング技術はどうしてもコストが高くなる。漏水探査全体のコストを削減することで、総合的にメリットが生み出せるようにしていく」(鬼頭氏)
NTTが最も重視しているのは「誰でも・簡単に・正確に」漏水探査を行えるようにし、地方における持続的なインフラの維持・管理を実現することだ。
鬼頭氏は、「今後も福岡市の協力を得ながら、ファイバデバイスの実用性や特定精度の向上などを図る。2027年10月を目途に実用化レベルの技術として確立したい」と展望を語った。
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