最前線のサイバーセキュリティ従事者に光を当てる「AironWorks Frontliners」レポート
人はリスクではなく“資産” ―― イスラエル国防軍元CISOが示す「AI時代の3ステップ」
2026年09月07日 13時00分更新
“People First”ですべての従業員をセキュリティチームに変えていく
それでは、こうした第2のサイバー革命にどう対抗すればよいのか。シャール氏は「3つのステップ」での対策を提言する。
1つ目のステップは、「人を第一優先としつつ、意識を高める」ことだ。サイバー攻撃などの重大な事態が組織を直撃した際に、決定的な対応の違いを生むのはシステムではなく「人」である。そして、意識は単なる説明ではなく、実際の体験を通してでしか高めることはできない。
シャール氏がCISO時代に、疑似的な攻撃を仕掛ける「レッドチーム」を活用していたのもそれが理由だ。「『こういう事態が起こり得る』ということを認識し、いざという時に対応できる体制を予め整えておく。それが“意識を高める”ということだ」と同氏は語る。
2つ目のステップは「シンプルなツールの導入」だ。シャール氏がサイバーセキュリティ部門にいた頃、新しい製品を見せられるたびに、「使いやすさはどうか?」と必ず尋ねていたという。なぜなら、シンプルでなければ人々は使い続けようとしないからだ。
その具体例として挙げたのが、組織内の全員に「ボタンひとつ」を提供するAironWorksの「PhishDetectAI」だ。従業員に怪しいメールが届いた際に、このボタンを押すだけで、即座にリスクが判定される。こうしたシンプルさがあるからこそ、ツールが形骸化することなく、従業員も自信を持ってセキュリティ対策がとれるようになる。
3つ目は「全員をセキュリティチームの一員にする」ことだ。上記のステップを通じて、IT担当者だけではなく組織のすべての人々が防御網に組み込まれていく。シャール氏は、「ソーシャルエンジニアリングという言葉が今でも使われるが、これは人の愚かさに対するパッチは存在しないからだ。だが、私はあえて別の角度から捉えている。人はセキュリティ上のリスクや負担ではなく、“資産”になり得る」と語る
シャール氏は最後に、「次のStuxnetがどのようなものになるか、いつ起こるのかは分からないが、組織はそれに備える必要がある。まず、人の意識を高め、シンプルなツールで自信を育み、そしてセキュリティチームの一員として巻き込んでいく。なぜなら、いざという時に違いを生み出すのは“人”だからだ」と締めくくった。
最前線のセキュリティ担当者に“スポットライト”を
オープニングセッションに登壇したAironWorksの代表取締役 CEOである寺田氏は、本カンファレンスを開催した理由を2つ挙げる。
1つ目は、セキュリティ従事者にスポットライトを当てるためだ。「セキュリティは、上手くいっている時には何も起きない。いわば“縁の下の力持ち”のような仕事」だと寺田氏。「真夜中のアラートで飛び起きる人、役員会への報告や予算獲得に奔走する人、インシデントの瞬間にすべての予定をキャンセルしてコミットする人。こうした最前線に立つ人たちが、組織を存続させている」と続けた。
2つ目の理由は、攻撃する側と守る側の「非対称な構造」を解消することだ。攻撃者は横でつながり、ツールやナレッジを共有し、AIも活用しながら進化を続けている。一方で、防御側は組織内で独立し、孤軍奮闘を強いられているのが現状である。
そのために当日は、実践的なナレッジを蓄えるための約20のセッションが展開されたほか、参加者同士がつながりを深め、知見を共有するための機会も設けられた。
なお、AironWorks自身は、AIを活用した教育・訓練プラットフォームやメールセキュリティ、バーチャルCISOサービスを提供している。今後は、サイバーセキュリティの枠にとどまらない、組織全体の「レジリエンス」を強化するプラットフォームへと進化を図っていくという。
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