AI×IT×OTの統合力で、"AIを現場で動かし続ける"会社に
富士ソフトがエンジニア1万人超を「AIネイティブ」化 実装力を武器にフィジカルAIなど3本柱に注力
2026年07月21日 07時30分更新
富士ソフトは現在、人月・プロジェクト型からオファリング(型化)型へのビジネスモデルの転換を進めている。2026年度に始動した新体制「富士ソフト Gen.2」のもと、重点市場に向けたオファリングの体系化を急ぐ。
同社が2026年7月16日に開催したAI事業戦略の説明会では、このオファリングにAIを統合し、「フィジカルAI」「ビジネスAI」「エンジニアリングAI」の3本柱として展開していく方針が明かされた。これら3つの事業ドメインを型化していく共通基盤「AIアセットファブリック」を今年中に整備するほか、グループ1万人以上のエンジニアを「AIネイティブ化」していく構えだ。
富士ソフトの代表取締役 社長執行役員 兼 CEOである室岡光浩氏は、「AIにおける競争は、AIを業務や現場で動かし続け、いかに成果に変えられるかというステージに移っている。富士ソフトは“AIを語る”会社ではなく、現実のビジネスや産業の中に“AIを組み込んで動かしていく会社”を目指していく」と強調した。
モデルやクラウド、構想だけでは“AIは動かない”
富士ソフトではAI事業戦略において「ACTIONABLE AI」というメッセージを掲げる。これは、AI実装をPoCで終わらせず、ラストワンマイルの実装まで支援して「AIを動かし続ける会社になる」という決意表明だ。
この表明は、同社の持つ3つの強みにより裏打ちされているという。1つ目の強みは「AI×IT×OTの統合力」だ。同社は長年、業務系ITと組み込み系制御の両面で実績を積み重ねてきた。だからこそ、AIモデルから業務システム、データ、制御、安全性、運用までを一体で設計し、現場で“動く状態”へとつなげる力を有する。
2つ目は「"止められない領域"での実績の型化」だ。製造業や流通、社会インフラといったミッションクリティカルなシステムを支えてきた知見があり、それをオファリングとして昇華できる。
3つ目は「ラストワンマイルの実装・運用の現場力」だ。上述した各領域で、現場の制約や既存システムとの接続、品質、安全性、保守運用に至るまで向き合い続けてきた。だからこそ、AI実装においても責任を持って最後までやり切ることができると語る。
「これらの強みが『ACTIONABLE AI』の実現につながる。世の中には、優れたAIモデルやクラウド基盤を提供する企業、あるいは上流構想に強いコンサルティング企業が存在する。しかし、実際の現場では、AIモデルやクラウド、構想だけでは決して成果は得られない。最終的に動かすところまで至れるかどうかが成否を分けるポイントになる」(室岡氏)
そして、富士ソフトがAIを統合したオファリングを展開するのが、「フィジカルAI」「ビジネスAI」「エンジニアリングAI」の3つの事業ドメインだ。
富士ソフトの強みを“3つの主戦場”に落とし込む
事業ドメインの1つ目が、AI×IT×OTの強みが最も活きる「フィジカルAI」だ。スマート工場・物流、産業ロボットのSI・FA制御、エッジAI・IoT、デジタルツインといった技術を組み合わせ、「現場を動かすAI」を提供。さらに、「つなぐAI(デジタルスレッド)」や「活かすAI(現場ナレッジ)」と共に適用することで、産業の現場全体を変革していく。
つなぐAIは、設計から現場データを一本の線(スレッド)で接続するものだ。BOM(部品表)を共通言語として、PLM(製品ライフサイクル管理)やMES(製造実行システム)、現場データまでを統合することで、設計変更の即時反映やトレーサビリティの確保、全体最適化を図る。活かすAIは、現場の暗黙知をナレッジ化するもので、RAGやオンプレミスLLMを活用できる環境を整えて、判断の標準化や保全の高度化、継続的な改善サイクルなどを実現する。
「こうしたフィジカルAIは、新しい工場だけを対象にするわけではない。既存設備(ブラウンフィールド)にAIを組み込み、現場力を高めていくことも、大きな事業機会になると捉えている」(室岡氏)
2つ目が「ビジネスAI」だ。人の業務を支援・代替し、業務プロセスそのものを変えるAIを実装していく。ここでも、顧客の業務を理解し、現場で定着するまでやりきる富士ソフトの現場力が活きる。
ビジネスAIの事例として、富士ソフトが「クライアントゼロ」として自社検証した上で、顧客に展開しているAI基盤が紹介された。これは、AIエージェントによって「企業情報の調査支援」「申請案件の滞留の通知」「社内ヘルプデスクの自動化」を進める基盤であり、実際に総合物流企業のロジスティードが導入している。
さらに、エージェンティックコマースにも注力していく。2026年8月には、AIエージェントが購買における検索から比較、提案、購入、手配までを一気通貫に実行するソリューションの発表を予定しているという。
3つ目が「エンジニアリングAI」だ。システム開発・運用の領域にて、AI駆動開発やテスト・運用の自動化、AIOpsやエージェントOps、モダナイゼーションなどを推進し、顧客の開発環境をAIネイティブに進化させる。
特に注力するのが「AIモダナイゼーション」である。長年ビジネスを支えてきたレガシーシステムが限界を迎える中、クラウドやAIによるモダナイゼーションの自動化は、いまや実用レベルに達している。富士ソフトは、金融や公共、製造といった領域の基幹系システムを支えてきた強みを活かし、既存資産を再利用可能なビジネス基盤に変えていく。
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