結局、社会に受け入れられるかどうかは信頼の問題だろう
ただ筆者は、この問題を単純にプライバシー論だけで語るべきではないとも感じている。街には監視カメラがあり、鉄道の車内にもカメラはある。そして自動車にはドラレコがあり、我々は日常的に撮影されながら生活している。
問題はカメラそのものではない。誰が、何のために、どのように使うのかという信頼の問題だ。
20年以上前、筆者はRFIDタグやユビキタス社会についてのコラムを書いていた。当時も便利な未来への期待と監視社会への不安が語られていた。しかし現実は極端な方向には進まなかった。交通系ICカードや電子マネー、入退室管理や物流システムなど、RFIDは社会に溶け込みながら進化した。
スマートAIグラスも同じ過程を辿るのかもしれない。現在の市場シェアだけ見ればカメラ付きが圧倒的優勢である。しかし、だからと言って将来も同じ議論が続くとは限らない。
なぜなら利用者が本当に求めているのは「記録」ではなく「理解」だからだ。AIが景色を理解する、外国語を翻訳する、美術館で作品を解説する、ナビをする。多くのユーザーが欲しいのは写真ファイルではなく、その結果として得られる情報である。
将来的には「撮影はするが保存はしないAIの目」という考え方も現れるかもしれない。ただしそれはユーザーの善意に頼るものでは意味がない。
本当に保存していないことを技術的に保証し、メーカーが明確なスタンスを示し、第三者機関が認証する仕組みなどが必要になるだろう。そのときに初めて、AIの目は人間社会の中で自然な存在になれるのかもしれない。
技術の進化自体は止められない 上手に付き合う知恵が必要
スマートAIグラスの未来は、カメラ有りか無しかという単純な二択ではない。むしろ「AIの目を社会がどう受け入れるか」という技術受容の問題なのだと思う。
20年前にRFIDがそうであったように、新しい技術は期待と不安を同時に連れてやってくる。そして多くの場合、現実の社会は賛成派と反対派の予想の中間あたりへ落ち着いていく。
Rokidを使っていて感じるのは、AIに目は必要だということだ。しかし同時に、その目をどう使うのかもまた重要である。
技術が進化すること自体は止められない。だからこそ我々に求められるのは、技術を拒絶することでも無条件に礼賛することでもなく、上手に付き合う知恵なのだろう。
スマートAIグラスは今、その入口に立っている。

今回の衝動買い
・アイテム:Rokid スマートAIグラス フルセット
・購入:Makuakeでのプロジェクト終了、現在先行予約受付中
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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