参考画像 Unsplash | Tyler Franta
東京大学とコアミックスは6月4日、紙のマンガ本で読んだ場合、タブレットで読んだ場合よりも、その後の読書時や問題解答時の脳活動が抑えられることをfMRIで確認したと発表した。
紙のほうが脳を活性化したわけではなく、むしろ“逆”になっているところがポイントだ。研究チームは、紙で読んだあとに左脳の言語野や右脳の前頭葉の活動が抑えられたことを「省エネ化」と表現している。脳がサボったという意味ではなく、物語の理解に必要な処理を、余分な負荷をかけずに進められた可能性を示している。
実験では、大学生と大学院生25人が参加した。題材は、同じ出来事を複数の人物視点から描く「ザッピングストーリー」形式のマンガだ。参加者は各話の前半を紙の本またはタブレットで読み、後半をMRI装置内のデジタル画面付きゴーグルで読んだ。その後、物語の内容に関する問題に答え、研究チームが反応時間と脳活動を調べた。
結果として、前半と後半の情報を統合しないと答えられない問題では、タブレットで前半を読んだ条件のほうが反応時間が長くなった。正答率に有意差はなかったため、「紙なら正しく答えられる」という単純な話ではない。差が出たのは、答えるまでにかかる負荷の部分だった。
脳活動でも違いが見えた。問題解答時には、紙とタブレットのどちらでも左脳の言語野が活動した。一方、後半のマンガを読んでいる最中は、タブレット条件では同じような活動が見られたが、紙で前半を読んだ条件ではその活動が目立たなかった。研究チームは、紙で前半を理解したことで、後半を読むときの言語処理が節約されたとみている。
さらに、前半だけで答えられる問題を解くときにも差が出た。タブレット条件では右脳の前頭葉の補助的な活動が見られたが、紙条件ではそれが抑えられていた。右脳の前頭葉は、左脳の言語処理を補助する領域とされる。紙で読んだ情報のほうが、あとから取り出して使うときにも、追加の処理をあまり必要としなかった可能性がある。
対象者は25人で、題材はマンガで、比較されたデジタル環境はタブレット。電子ペーパー端末、スマホ、スクロール式のウェブ記事、学習用アプリまで一括りにできるわけではないが、少なくとも今回の条件では、紙の本が物語理解の後続処理を軽くするという傾向が示された。
紙の本は、単なる古いメディアではなかった。少なくとも物語を深く追いかける場面では、ページという物理的な手がかりが、脳の仕事を少し減らしているのかもしれない。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります













