日本企業のVMware移行の現在、データ主権への向き合い方まで
永遠に更新できる「RHEL Forever」は、日本の声が実ったもの ― レッドハット三浦社長が語るAI時代のインフラ
2026年05月27日 08時00分更新
VMware移行・データ主権における日本組織の現在
── VMwareのライセンス体系変更から約2年が経ちました。移行先を検討する企業が増えていますが、日本市場の動向はいかがですか?
日本は北米に比べて慎重なので、昨年まではPoCで動作確認をするフェーズでした。今年・来年にかけて、いよいよ本番移行が本格化する波が来ていると感じています。
背景にあるのは、ライセンス体系変更時のユーザー側の判断です。値上げを受け入れながらも、その多くが「今回は継続するが、次のインフラ更改ではVMwareは使わない」と決めています。インフラ更改は一般的に5年周期であるため、その意思決定のタイミングが今まさに到来しています。
その中でRed Hatを選ぶ組織に共通しているのは、「コンテナ化・モダナイズも見据えたい」という一歩先の視点を持っている点です。どうせ引っ越しをするのなら、その先まで見越して動こうという狙いです。
── イベントではデータ主権(ソブリン)にも大きなスポットが当たりました。日本の組織の関心はいかがですか?
日本はアジアの他国や北米に比べると、危機感がやや薄い印象です。「ソブリンについて考えなければ」という言葉はよく聞くようになりましたが、まだバズワードの域を出ておらず、具体的な実装にまで踏み込んでいる組織は多くはいないのが現状です。
ただ、状況は変わりつつあります。エージェンティックAIの普及により、データがどこから来てどこへ行くのかが把握しにくくなってきたからです。「自社のデータが本当に日本にあるのか」というデータ主権への意識は確実に高まっています。地政学的な不安定さも続く中で、この流れは一時的なもので終わらないでしょう。
Red Hatは、要素技術・オープンテクノロジーを提供する立場です。実際にオンプレミスで構築するか、AWS上に乗せるか、富士通のインフラを活用するかといった判断は顧客の意思決定に委ねます。ただ、どの選択をするにしても、「技術がオープンであること」の重要性を理解していただくことが、私たちの最も大切な役割だと考えています。
── 今回のイベントには日産自動車も登壇しました。どのような取り組みですか?
Red Hatが手がける「RHIVOS(Red Hat In-Vehicle Operating System)」を活用した、次世代ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)プラットフォームにおける取り組みです。RHIVOSは、車載システムに求められる厳格な機能安全規格であるISO 26262 ASIL-Bの認証を取得した、Linuxベースのプラットフォームで、今Red Hatが注力する新しい領域になります。
日産自動車は、正式に採用を決定したというより、次世代SDVプラットフォームに向けた取り組みを共に開始した段階です。日本の他の自動車メーカーでも同様に検討が進んでいます。
成熟したグローバルカンパニーに向けともに成長中
── IBM出身で、2023年にレッドハットの代表取締役社長に就任されました。
前任の退職に伴い、広く候補者を募る中で声をかけていただいたのがきっかけです。親会社のIBMにいる立場からの辞令ではなく、外部候補と同じプロセスで面接を受けました。転職するつもりは全くなかったのですが、違う世界を経験したことがなかったこともあり、面白そうだと思って飛び込みました。
実際に来てみると、カルチャーがまったく異なりました。IBMは非常にストラクチャードで統制の取れたグローバルカンパニー。Red Hatは、言うならば「年を取ったスタートアップ」で、ジャングルに来たような感覚でした(笑)。
良い意味でも悪い意味でも、上が右と言ったら全員が右を向くような文化ではないです。自由に育ってきた分、グローバルカンパニーとしてのマチュリティ(成熟度)を上げていく成長痛の時期でもあると感じています。IBMで学んだことを活かしながら、一緒に成長しているという感じですね。
── テック業界は女性の数が少ないですが、同じようにリーダーに立つ女性も増えてきました。変化を感じますか?
以前よりは増えてきたとは感じますが、日本の大手SIerやパートナーとの会合では、まだまだ女性の姿は少ないのが現状です。ただ、少数派であることはアドバンテージでもあります。顔と名前を覚えてもらいやすいのです。Red Hatに来てからは、赤いアイテムを身につけて臨むようにしています。それもある種の戦略ですね(笑)。
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