「5回中4回はデタラメ」それでもAIを使い続けたワケ
では、生成AIをどのように活用していったのか。
生成AIが圧倒的に強いのはアイデア出しです。休むまもなく、求めに応じて、いくらでも様々なアイデアを提案してきます。
最初期には、当時登場していたChatGPT-3.5を使い、設定案を作っていました。初期の公開されたGPTは、ハルシネーションがひどく事実関係を調べさせると全部間違っているというのが当たり前でした。しかし、Exelioは架空の設定のゲームであるため、架空のSF設定の案は刺激となり、ゲームの世界観を広げる大きな役割を担いました。
もう一つ重要なのがプログラミングです。Exelioでは、バイブコーディングを採用することはありませんでした。もちろん、まだ登場以前であったことと、LLMの知識が足りていなかったためです。UE5には「ブループリント」と呼ばれるビジュアルスクリプティング環境が用意されていますが、実行が遅いという弱点があります。アクションゲームでは1秒間に何回画面を書き換えるかというフレームレートを高いまま維持できるかが重要です。そのため、ブループリントで試した後、C++に書き直して実行速度を速めるのが一般的です。しかし、UE5のC++を使いこなせる経験のあるエンジニアはそれほど日本におらず、UE5で開発する場合しばしばネックになります。
そのため、生成AIをプログラミングに使う可能性を常に模索してきました。部分的に使えるようになってきたのはGPT-4あたりです。近年の3Dゲームで、適切なインタラクション性にとって重要なのが「物理挙動」です。一世代前のゲームでは、決められたアニメーションを再生し、終了すると別のアニメーションに切り替わるという形で挙動させていました。しかし、それでは動きが固くなり、平凡なものになってしまいます。そこに物理挙動を組み入れると、「ダメージを受けると、体が予期しない方向に動く」といったことができるようになります。ただ、最適なアルゴリズム設計は難易度が高かったのです。
ゲームディレクターはそこにChatGPTを使いました。ChatGPTはアップデートが入るたびにUE5についての学習が進み、適切なコードを出すことが増えていきました。「物理演算をさせたいのだけど、どういう関数を使い、うまく処理するコードを使えばいいか」ということを聞き、そこから出てくる回答を実装のためのヒントにしていったのです。
ただし、まだまだハルシネーションは相変わらずひどいもので、5回中4回はデタラメということが普通でした。ChatGPTのあるバージョンアップデート直後に実装を見直したところ、見たことのない関数と処理方法が説明されて、「こんな関数があるのを知らなかった」と驚きながら実装してみたところ、すべてウソで、その調査だけで丸一日潰れてしまうといったことはよく起こっていました。それでも、AIの進化は日々止まらず、使えるコードが出るときには当たるため、逐次のコード生成では積極的に使うようになりました。
△主人公のジャンプシーン(開発中のもの。リリース版は調整が入っています)
2025年11月に「Gemini 3 Pro」が出てきた頃には、もう一段階水準が上がってきました。作業も最終盤となり、外部企業にも協力してもらい、本格的にデバッグ作業をする段階に入ります。アルゴリズムが甘いところやバグの修正、高速化といった作業をGeminiに任せられるようになってきたのです。UE5はまだエンジン内環境でのバイブコーディング環境が整っていないこともあり、チャットにコードを貼り、その結果を見て修正するという使い方でしたが、UE5への理解が深く、修正作業がより適切になり、作業効率化が大きく進んだのです。
ただし、現状の使い方は、ゲームの作り方の経験のあり設計がわかっている人、コードが読めてどこに課題があるのかを適切に指摘・修正できる人でないと、使いこなすことはできません。単に生成AIに指示するだけで、ゲームが勝手に出来上がるという段階までは至っていません。生成AI利用は、ベテランの方が生産性が向上するという傾向があるのですが、早い段階から、それを実感していました。

この連載の記事
-
第146回
AI
ローカル音楽生成AIの新定番? ACE-Step 1.5はSuno連携で化ける -
第145回
AI
ComfyUI、画像生成AI「Anima」共同開発 アニメ系モデルで“SDXL超え”狙う -
第144回
AI
わずか4秒の音声からクローン完成 音声生成AIの実力が想像以上だった -
第143回
AI
AIエージェントが書いた“異世界転生”、人間が書いた小説と見分けるのが難しいレベルに -
第142回
AI
数枚の画像とAI動画で“VTuber”ができる!? 「MotionPNG Tuber」という新発想 -
第141回
AI
AIエージェントにお金を払えば、誰でもゲームを作れてしまうという衝撃の事実 開発者の仕事はどうなる? -
第140回
AI
3Dモデル生成AIのレベルが上がった 画像→3Dキャラ→動画化が現実的に -
第139回
AI
AIフェイクはここまで来た 自分の顔で試して分かった“違和感”と恐怖 -
第138回
AI
数百万人が使う“AI彼女”アプリ「SillyTavern」が面白い -
第137回
AI
画像生成AI「Nano Banana Pro」で判明した“ストーリーボード革命” - この連載の一覧へ






