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核融合、結局どこまで来てる? 知っておくべき「社会実装への成立条件」

プラズマ成功の先に何があるのか。発電所として成立する条件を整理する

特集
日本で核融合は産業になるのか。商用化の条件とは

 エネルギー価格の不安定さや地政学的リスクが続くなか、核融合エネルギーへの投資が、現実的な選択肢として語られ始めている。

 政府も核融合エネルギーの開発と産業化を国家的な重点項目として位置づけ、取り組みを進めている。長期的にはエネルギー安全保障にも寄与する可能性があり、国家が腰を据えて挑むテーマとして、その条件は整いつつある。一見すると、核融合への投資は、合理的な選択に見える。

 ただし同時に、核融合は大きな賭けでもある。開発期間は長く、必要な資金も桁違いだ。これは将来への戦略的投資なのか、それともギャンブルなのか。

 日本でも、核融合を「研究テーマ」ではなく「事業」として捉える動きも出てきている。本特集では、そうしたスタートアップの取り組みを手がかりに、核融合の現在地を整理していく。

よくある誤解「プラズマが制御できれば、あとは時間の問題」

 核融合は、「プラズマ(反応)が出たら終わり」な技術ではない。かつての核融合関連でよく目にしたのが、「高温プラズマの生成に成功」「核融合反応を確認」といったニュースだ。

 科学的には成果だが、それだけでエネルギー問題が解決できるわけではない。国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」計画も、目的は「核融合反応の科学的実証」であり、電力を売る発電所ではない。反応が起きることと、エネルギー源となり得る状態とのあいだには、大きな溝がある。

正しくは「プラントが統合的に回ってからがスタート」

 核融合をエネルギーとして扱うには、少なくとも次の問いに答えなければならない。

・どうやって熱を取り出すのか
・どうやって燃料を循環させるのか
・どうやって止める/守る/直すのか
・どうやって恒常的に運転させるのか

 核融合実装に向けた本当の勝負は「物理実験」から「プラント産業」へ移行できるかにある。

核融合発電所は、プラズマ炉(中央)だけでなく、発電、燃料や熱のサイクル(右側)を含む巨大なプラントとして成立する。図は、京都フュージョニアリング株式会社が想定するフュージョンエネルギー炉のイメージ

核融合が成立するための論点

 核融合が“技術として成功する”だけではなく、 “社会インフラとして成立する”ためには何が必要なのか。本稿では、5つの観点から整理してみた。

①材料
高温・高放射線環境に耐え、量産できる材料が必要になる。さらに、安定して調達でき、コスト的にも現実的であることが求められる。

②製造
1点モノの試作ではなく、同じものを作れる前提での製造プロセスが求められる。

③制御・安全
止められること、事故を想定できること。「核融合はクリーンで安全」という言葉だけでは、社会は動かない。

④燃料・規制
放射性物質であるトリチウムの扱い、規制の整理、保険。ここだけに限らないが1つの企業単体では解決できない領域でもある。

⑤運用・保守
保守・メンテナンスを前提として運用する。発電プラントは「建てて終わり」ではない。

核融合は「実験」から、「産業」の課題に入った

 核融合を巡る議論は、長らく「すごい/すごくない」「夢がある/まだ早い」という2択で語られがちだった。だがようやく、「どこが詰まりやすく、どこに手を打つべきか」といった具体的に見えるものも現れてきた。

 今、世界では「炉そのもの」を作る企業だけでなく、核融合炉の“外側”を狙う新興勢力も台頭している。日本発で「発電」、「燃料循環」、「プラント統合」といった領域にフォーカスしているスタートアップが、京都フュージョニアリング株式会社である。

 同社は、核融合プラントを実際に成立させるための周辺システムを束ねるエンジニアリング企業として、国内外の核融合プロジェクトに関わってきた。

 その中核を担うのが子会社のStarlight Engine株式会社で、日本国内で統合的な発電実証を行う「FAST計画」を通じて、発電・燃料循環・サプライチェーンを含めたプラント全体の実装を目指している(参照記事)。

 彼らが取り組んでいるのは、「核融合反応」そのものではない。核融合を発電所として成立させるための条件だ。

 核融合は、ブレークスルー待ちではない。いま問われているのは、「どこを、いつ手当てするか」だ。

 次回は、日本の核融合はどこでつまずきやすいのか。その構造を「6つの失敗シナリオ」から整理していく。

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