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XRでは早すぎた。力触覚デバイス「EXOS」がフィジカルAIで再評価された理由

義手から生まれた「EXOS」、次の持ち主はDiver-X

 ヒューマン・インターフェース・デバイス(HID)を開発するDiver-X株式会社は、力触覚提示デバイス「EXOS」の事業ライセンスを取得した。これまで触覚フィードバック技術を強みとしてきた同社が、力や重さ、抵抗といった「力触覚」の領域へ本格的に踏み出すことになる。

 EXOSは、2020年に解散したexiii株式会社によって開発・展開されていたデバイスだ。ルーツは義手開発プロジェクトにあり、人間の手と同じように「物をつかむ」「力加減を感じる」ことを目指して磨かれてきた技術である。その完成度の高さから、当時はロボットのハンドや遠隔操作デバイスとしても期待を集めていた。

力触覚デバイス「EXOS」

XRでは早すぎた力触覚、フィジカルAIで居場所が見えた

 ただし、当時の主戦場はVRだった。確かにVR市場は盛り上がっていたが、中心はゲームコントローラーなどのエンタメ用途だ。EXOSが持つ精密な力触覚技術は、体験としては魅力的でも、活かし切れるユースケースが限られていた。技術が悪かったわけではない。単純に、時代と用途が少しだけ早すぎた。

 Diver-Xの歩みも、出発点はエンタメ寄りだった。グローブ型デバイスを通じて「触覚」を磨いてきたが、実世界に近い操作感を再現するには、どうしても力触覚が足りなかったという。物をつかんだときの重さや、押し返される抵抗感が再現できなければ、人の手のインタラクションは完成しない。

Diver-Xのグローブ型VRコントローラー「ContactGlove2」

 だが、ここにきて状況を一変させたのが、昨今のフィジカルAIの波だ。ロボットの遠隔操作、実世界で動くAIの学習といった分野では、「手の感覚」はもはや没入感の演出ではない。どのような力で、どのタイミングで、どう物体に触れたのか。その情報自体が、学習データとして価値を持つ可能性がある。EXOSが持つ力触覚技術は、この文脈で一気に実用性を帯びた。

技術は消えなかった。EXOSが次につながった理由

 重要なのは、exiiiが解散しても、EXOSの技術が宙に浮かなかった点だ。関連資産はきちんと管理され、今回のように事業として継承できる状態が保たれていた。Diver-Xにとっては、研究開発をやり直すことなく、必要としていた力触覚技術を手に入れ、スピード感をもって次のステージへ進める。

 元exiii代表で、現在はCurious Robotics株式会社を率いる山浦博志氏は、今回の事業継承についてこう語る。「Physical AIやHumanoidといった潮流が本格化する中で、XR分野で培われてきた要素技術は、極めて重要になる。約5年かけて積み重ねてきた取り組みが、このような形で日本で継承され、次の文脈につながったことをうれしく思います」

Curious Robotics株式会社 代表取締役 山浦博志氏

 スタートアップの世界は入れ替わりが激しい。会社単位で見れば、終わってしまう例のほうが多いだろう。それでも、技術がきちんと残り、次の挑戦に組み込まれていくなら、エコシステム全体としては確実に厚みが出てくる。EXOSの経緯を追っていくと、日本のハードウェアスタートアップも、少しずつだが技術が次につながるようになってきたようでうれしい。

※参考:今回Diver-Xが取得したEXOS関連技術
・関連知的財産一式
・ EXOS Wrist(手首の動作に力触覚を与えるデバイス)
・ 五指触覚グローブ(指先の感触を再現するグローブ型デバイス)
・Hand Unit(ロボットハンド等の基盤ユニット)

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