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病は気から。感情を測り、神経に介入するメンタルヘルス

CES2026で見えた“身体のアップデート”③

 感情やストレスを、身体反応として捉え、データで把握する──。そうした発想は、ここ数年で急速に広がった。心拍変動や皮膚反応、声のトーンなどを手がかりに、メンタルの状態を可視化する技術は、いまや特別なものではなく、設計の前提になりつつある。

 CES 2026で一段新しかったのは、その先だ。感情を「測れる」ことを前提にしたうえで、どう介入し、状態を切り替えるか。メンタルヘルスは、可視化の段階を越え、身体側からアプローチするフェーズへと踏み込み始めている。

感情は「言葉」より先に体に現れる

 ペンダント型のエモーションセンサーを展示していたのが、NUNAだ。胸元に下げる小型デバイスの内部にはミリ波レーダーが搭載され、心拍変動などの微細な身体の動きを検知する。さらに音声についても、会話の内容は記録せず、声のトーンや揺らぎといった感情の起伏のみを解析する。

 推定されるのは「喜び」「落ち着き」「不安」「怒り」といった感情状態。ユーザー自身が気づく前に、身体の反応として感情を捉える設計だ。同社はこのデバイスをコンシューマー向けに販売しており、日々の感情の変化を把握するツールとして、アンガーマネジメントなどへの活用を想定しているという。

心の疲労を「残量」表示

 ストレスをよりマクロに捉えようとしているのが、MENTAGRAPHのスマートリング「Mentoring2(メンタリング2)」だ。同社は、メンタルの状態を「Mental Battery(メンタルバッテリー)」という独自指標で可視化する。日々のストレスや緊張の蓄積を、スマートフォンの電池残量のように示すことで、「今日は無理をしない」「そろそろ休むべきだ」と判断しやすくする。

 リングにはEDA(皮膚電気活動)センサーも搭載されており、発汗の変化からストレス反応や驚きといった生理的反応を取得する。主な販売先はHR領域で、社員の健康管理や組織マネジメントを目的としている点も象徴的だ。

痛みと気分を「神経」から切り替える

 メンタルヘルスを、さらに一歩踏み込んで捉えているのが、OhmBodyだ。同社のデバイスは、生理痛をお腹からではなく、耳周辺にある迷走神経や三叉神経の末梢枝に微弱な電気刺激を与えることでケアする。

 生理中は交感神経が優位になりやすいが、この刺激によって副交感神経を優位に導く。痛みの伝達を抑えるだけでなく、セロトニン分泌を促し、気分の落ち込みやイライラの軽減も狙う。すでにFDA認証を取得しており、単なるリラクゼーション機器ではなく、神経系への介入装置として位置づけられている。

メンタルは「測られる前提」になった

 CES2026で見えたメンタルヘルスの共通点は、「感情を言語化させない」「本人の自覚に頼らない」「神経・皮膚・心拍といった身体反応を起点にする」という設計思想だ。メンタルは、気合や我慢で乗り切るものではない。身体の状態として把握し、必要なら介入する対象へと変わりつつある。

神村優介

シェイプウィン株式会社 代表取締役。
山口県光市生まれ。徳山高専卒業。NHK高専ロボコン出場経験を生かしたロボット教育ビジネスで経済産業省後援のビジネスプランコンテスト中国地区大会で最優秀賞取得。株式会社セガトイズに入社し、家庭用プラネタリウムの商品をプロデュース・マーケティングし、年間15万個出荷の大ヒットを記録。その後、PR&デジタルマーケティングを支援するシェイプウィン株式会社を24歳で設立。国内企業ではChatWorkやスマレジ、TEMONAなどのスタートアップを担当。2022年からカナダ・バンクーバーに移住し、現地企業で世界14ヵ国250社以上のクライアントに日米市場向けPRマーケティング支援をしている。

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