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「Inter BEE 2025」レポート

IT系編集者が行ってみたら思いのほか「IT」だった

【コラム】ITエンジニアの皆さん、来年こそは「Inter BEE」に行きましょう

2025年12月29日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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業界は違えどテーマは同じ:DX、クラウド、ネットワーク、AI活用……

 今年のInter BEEでも、ITエンジニアのみなさんにはおなじみのITベンダーが多数出展しており、コンテンツ制作のDXを実現するクラウド活用や、柔軟かつ効率的なネットワーク構成、そして今後のAI活用などがテーマになっていました。

 たとえば「AV over IP」「Media over IP(MoIP)」のキーワードで出展するITベンダーが多くありました。AV over IPはProAV向け、MoIPは放送局向けという大まかな違いはありますが、音声や映像のデジタルデータを、ITの世界でおなじみのIPネットワークで伝送する技術の総称です。

 さまざまなプロトコルが標準化されていますが、IPネットワークベースなので、遠距離間の接続にインターネット回線やEthernet/IPの専用線が使えます。またローカルネットワークでは、接続したい機器はすべて多ポートのスイッチに収容すればよく、入力/出力の制御はソフトウェアで操作できます。また、汎用品のスイッチやケーブル(LANケーブルや光ファイバ)で構成でき、PoE給電できる機器も多い(マイクやスピーカーなど)ため、構築コストの低減にもつながります(関連記事:SIer/ネットワーク技術者こそ知ってほしい! 「AV over IP」がもたらすビジネスチャンス)

近年、AV over IP対応スイッチに注力しているヤマハでは、最新スイッチと自社製品、映像機器パートナー製品を組み合わせたデモ展示を展開

同じくAV over IP対応スイッチに注力するネットギアは、多くのパートナーと共に大型ブースを構えていた

 また、放送局/番組制作者向けには「リモートプロダクション/リモートクラウドプロダクション」といったキーワードも見られました。

 リモートプロダクションとは、スポーツ中継などの現場に多数のスタッフや機材を配置せず、現場の音声や映像をそのまま放送局に伝送して、放送局側で番組制作を実施するという手法です。さらに、クラウド上に制作用システムを用意し、そこでリモートプロダクションを行うのがリモートクラウドプロダクションです。従来必要だった、中継現場への中継車や多数のスタッフの配置を簡素化できるため、大幅なコスト効率改善に寄与します。

 リモートプロダクションはすでに複数のキー局で実用化されていますが、今回のInter BEE内「INTER BEE DX x IP PAVILION」では、複数拠点での分散型制作、ハイブリッドクラウドによる冗長化、IOWN APNなどの最先端回線活用、システム全体の統合監視などのデモ展示が行われていました。放送というミッションクリティカルな世界の話であり、筆者は「IPエンジニア視点でもふつうに興味深いのでは……?」と思いましたが、いかがでしょうか。

「INTER BEE DX x IP PAVILION」では、複数のテレビ局間をMoIPとクラウドシステムでつなぐ、仮想的なデモを披露していた

システム構成

 現在、IT業界における最重要テーマである「AI活用」は、Inter BEEにおいても注目テーマとなっていました。動画の文字起こしやタグ付けといったシンプルなものから、“AIアナウンサー”や本格的な映像生成まで、幅広い活用提案が見られました。まだ初期段階ではありますが、来年以降、どのような発展が見られるのかは要注目です。

 そして最後に、IT化が進むことで「サイバーセキュリティ」も重要なテーマになります。これまでは独自技術で構成されていたネットワークが、IPネットワークとしてつながるようになったからです(OTセキュリティの事情と少し似ています)。まだまだ対策検討はこれからという段階ですが、今後必須となるテーマでしょう。

* * *

 このように、現在のInter BEEは「放送業界向けの展示会」と思い込んでいると惜しいような内容に変わってきています。ITエンジニアやSIerの皆さん、来年はぜひInter BEEにも足を運んでみるとよいのではないでしょうか(2026年は11月18日~20日だそうです)。放送やProAVの専門知識がなくても、きっと参考になるものが発見できると思いますよ。

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