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「Snowflake Intelligence」はRAGの精度に悩む日本企業を救えるか

コクヨ、富士フイルム、JINSがSnowflakeのAIエージェントで挑む“データアクセスの民主化”

2025年12月12日 12時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 「RAGを組んだものの精度が出ない、という企業から問い合わせが増えている」―― 企業のAI活用における“回答精度”と“セキュリティ・ガバナンス”の課題に応えるのが、ビジネスユーザー向けにデータエージェントを構築できる「Snowflake Intelligence」だ。2025年6月にパブリックプレビューを開始し、11月に一般提供を迎えている。

 Snowflakeが2025年12月9日に開催した説明会では、Snowflake Intelligenceのパブリックプレビューに参加したコクヨ、富士フイルム、ジンズ(JINS)ホールディングスの3社が登壇し、検証結果を共有した。

 Snowflakeの社長執行役員である浮田竜路氏は、「企業が意思決定するのに役立つ、原油というべきデータが企業の中で眠っている。非構造化データも含めた企業データをAIで使えるようにすることが、AI活用の深みと厚みを持たせる上で重要」と語った。

(右から)Snowflake 社長執行役員 浮田竜路氏、コクヨ ビジネスサプライ事業本部 ビジネスサプライ事業戦略室 データドリブン推進ユニット 夛名賀寛氏、富士フイルム ICT戦略部 三ツ井哲也氏、ジンズ アイウエア事業開発本部 AI&データサイエンス部 部長 川嶋三香子氏

“データアクセスの民主化”を推進するSnowflake Intelligence

 Snowflake Intelligenceは、ユーザーの質問だけではなく、その質問に関連するデータまでを理解する「対話型のデータエージェント」を構築するためのフレームワーク。

 企業内に散在するデータをSnowflakeのデータ基盤に統合し、エージェントと窓口となるインターフェース(UI層)を構築できる。「Cortex Agents」では、業務に最適化したカスタムエージェントをノーコードで開発可能だ。

Snowflake Intelligenceによるデータエージェント

 Snowflake Intelligenceの強みは、構造化・非構造化データをAIレディなデータに変え、回答精度を確保できることだ。構造化データに対しては、質問内容から最適なSQLを自動生成する「Text-to-SQL」機能を提供。非構造化データに対する、ベクトル検索やキーワード検索、リランキングを組み合わせたハイブリッド検索と使い分ける仕組みだ。

 もうひとつの強みは、「セキュリティとガバナンス」だ。Snowflakeがデータ基盤を提供する中で培ってきたセキュリティ・ガバナンスの機能が、エージェントを通じたデータアクセスにも適用される。

Snowflake内でも活用が進むSnowflake Intelligence

 現在、Snowflake Intelligenceは、グローバルで1200社が利用しており、国内でも既存ユーザーの4割から5割ほどがパブリックプレビューを試しているという。同社に問い合わせが増えている「RAGを構築しても精度が出ない」という日本企業に訴求していくという。

 浮田氏は、対話型のインターフェースを通じて、誰もがデータの洞察を得られる「データアクセスの民主化」を推進できるサービスだと説明。「より多くの企業データを活用するための文化を醸成できる」と強調した。

 ここからは、パブリックプレビューからエージェントの開発を進めるコクヨ、富士フイルム、ジンズの事例を紹介する。

コクヨ:現場構築のエージェントをデータ活用の“エントリポイント”に

 まずは、文房具やオフィス家具、事務機器などを手掛けるコクヨの取り組みだ。オフィス通販「カウネット」を運営する「ビジネスサプライ流通事業」での事例が紹介された。

 同事業部では、Snowflakeをコアとしたデータ分析基盤を構築。カウネットの基幹システムを中心に、様々なデータをSnowflakeに集約し、BIツールやStreamlitのウェブUIでアクセスできる環境を整備してきた。

 一方、課題となっていたのが、現場のビジネスユーザーが抱えるデータ活用の壁だ。データ分析基盤を担当する夛名賀寛氏は、「BIツールやPython、SQLといったスキル習得のハードルがあまりにも高い。本来ハードルが低いBIツールも、全員にライセンスを貸与するとコストパフォーマンスがネックとなる」と語る。

コクヨ ビジネスサプライ事業本部 ビジネスサプライ事業戦略室 データドリブン推進ユニット 夛名賀寛氏

全員参加型のデータ活用を目指す中、ビジネスユーザーに課題

 この壁を解消すべく、2025年9月よりSnowflake Intelligenceの検討を開始した。対話型インターフェースで技術習得の必要がなく、ライセンスの貸与も不要なことが決め手となったという。

 データ活用に向けて構築していたデータモデルを基に、売上情報を商品軸や顧客軸でアドホック分析できる「売上分析エージェント」を開発。担当者が売上の進捗確認をしたり、施策の効果を検証したりするようなユースケースを想定しており、事業部内で検証中だ。

 夛名賀氏は、Snowflake Intelligenceのメリットとして、データ活用の「エントリポイント」を作れることを挙げる。「ビジネスユーザーはそもそも何をして良いか分からないという状態に陥りがち。AIが『こういう分析をしてみませんか?』と問いかけてくれるため、データ活用のステップを踏むことができる」と語る。加えて、ビジネス課題を抱えている現場の非開発者がドメイン知識を活かしたエージェントを内製できる。

試用中の売上分析エージェント

 今後は、サプライチェーン領域の受注分析や在庫分析など、エージェントを適用できるユースケースを開拓していく予定だ。加えて、データモデルやセマンティックレイヤーを継続的に改善し、さらなる精度の向上を図っていく。コストパフォーマンスが悪かったBIツールのライセンスも7割ほど削減する計画だ。

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