SAR衛星とは、どのような衛星なのか?
QPS研究所の小型SAR衛星「ヤチホコ-Ⅰ」が初画像を公開した(11月28日の記事を参照)。
公開された画像は、街の境界や建物の形がはっきりわかるほど精細。“レーダーから見た日本の姿”をくっきりと示している。
では、そもそも「SAR衛星」とはどんな衛星なのだろうか?
SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)衛星とは、ひと言で表現すれば「電波で地表を見る衛星」である。マイクロ波を地表に向けて照射し、その反射波を解析することで、地表の形状や状態を画像化する衛星を指す。
レンズ、画素センサーを用いる光学衛星と決定的に違う特徴は、天候や時間帯に撮影結果が依存しないこと。夜間や、荒天時、分厚い雲が空を覆っているようなシチュエーションでも、マイクロ波なら地表に届く。
この特性によって、「畑の土の状態」「地面のわずかな変化」「建物の倒壊状況」など、光学では捉えにくい情報の取得が可能になる。
災害発生時の状況把握などへの活用が期待される
今回公開された画像は、11月25日の初観測で取得されたものだ。ヤチホコ-Ⅰは、分解能1.8mのストリップマップと最大46cmの高精細スポットライトモードを備えており、街区や建物の輪郭を鮮明に捉えることができる。
光学衛星とは異なる「レーダー視点」で街を見たとき、どれほど細かい情報が引き出せるのか──今回公開された画像は、それをよく示している。
SAR衛星には前述の特徴があるため、日本で頻発する自然災害とも相性がいいとされている。具体的には、水害・土砂災害発生時の浸水範囲、地震発生時の道路の寸断、建物の被害状況の把握などに長けている。
同社は、将来的に複数機の運用による「高頻度観測体制」を目指しており、災害監視、都市インフラ、農業、水資源管理など、社会基盤を支える幅広い分野での活用が期待される。
なお、公開された撮影画像は同社公式サイトにて閲覧できる。









